塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」について、厚生労働省の薬事分科会などの合同会議が20日、緊急承認の適用を見送ったのは、有効性を「推定」できるだけのデータがそろわない中、急いで承認しても医療現場で使われる見込みがないとの意見が大勢を占めたためだ。感染の急拡大を受け、緊急承認を容認する意見もあったが、米企業の飲み薬2種類が実用化されていることもあり、最終段階の治験データを待つという結論に至った。
この日の審議で最大の焦点となったのは、塩野義の飲み薬の有効性を巡る評価だった。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、6月の専門部会で示した審査報告書を初めて公表した。塩野義が提出した中間段階の治験データでは「効能・効果に対する有効性が推定できるものとは判断できない」と断じた。同席したPMDAの藤原康弘理事長は、症状改善の効果について「(塩野義の飲み薬と偽薬とで)普通に見ると差がない」と指摘。体内におけるウイルス量は明確に下がっているものの「臨床的効果はこのぐらいか、というのが正直な判断」と解説した。
PMDAはまた、ゾコーバの安全性について「大きな懸念は認められない」としつつ、米ファイザー社のパキロビッドと同様に他の薬との「併用禁忌」が多くなると説明。胎児の骨格形態に異常を及ぼす「催奇形性」があり妊婦の使用も禁止すると説明した。
合同会議では委員の意見表明の前に、感染症専門家が参考人としての見解を表明。富山県衛生研究所の大石和徳所長は、症状改善の効果が明確にならなかった理由として「臨床試験の実施中にデルタ株から(比較的軽症者が多い)オミクロン株に変わり、症状が大きく変化したこと」が影響しているとの見方を示し、「(感染拡大の)『第7波』における重症化阻止、症状緩和や、早期回復が期待できる」と緊急承認ができるとの考えを示した。
だが、承認の可否について議論した委員からは「医師が利用する場面がどれほどあるのか」「第3相治験(最終段階の治験)の結果が出るまで手が出せない」「救世主にはなかなかならない」など否定的意見が続出。最終的に分科会長の太田茂和歌山県立医科大教授が「提出データから有効性が推定されるとの判断はできない」と述べ、全会一致で緊急承認を見送った。
塩野義は、多くの患者に投与して行う最終段階の治験を進めている。厚労省の担当者は20日夜、今後について「何らかのデータが出れば、再度審議する可能性はある」と説明。大規模治験の解析結果が待たれることになる。【横田愛、矢澤秀範】