大阪市平野区で2020年1月、30代の母親が市営住宅の高層階から生後7カ月の三女を落として殺害した事件で、市の児童虐待事例検証部会は1日、再発防止策をまとめた報告書を公表した。複数回にわたる母親からのSOSに対し、関係機関が虐待リスクの高まりを的確に捉えられなかったとして、情報共有の徹底などを求めた。
報告書などによると、母親は知的障害があり、事件当時、11歳~生後7カ月の子ども4人がいた。事件の数日前に、同居する夫や義母らがインフルエンザに感染。家事や育児の負担が集中し、母親は市こども相談センターで「三女の世話が大変なので預けたい」と訴えたが、家族が難色を示して利用に結びつかなかった。
報告書では、母親からの相談に対し、関係機関が「預かるかどうか」の対応に終始していたと指摘。三女を預けたいという相談に対し、家族で話し合って決めるように促していて、「知的障害のある母には現状のつらさを自ら家族に働き掛けて解決するのは困難だった」と言及した。
さらに、三女は支援が必要な子どもや家庭について話し合う要保護児童対策地域協議会(要対協)に登録されていたが、要対協の運営マニュアルで定め、具体的な支援策の資料となる「リスク評価シート」が作成されていなかった。シートを作ることで、関係機関で共通理解を図ることになっていた。
市によると、平野区は要対協の登録件数が市内最多で、職員が業務に追われて評価シートを作成できなかったという。検証部会は市に対し、区子育て支援室の体制強化を図るようにも求めた。
部会長の前橋信和・関西学院大名誉教授(児童福祉学)は「母親の訴えの背景にあった家族の状況や障害特性を把握しきれなかった。育児負担を軽減するサービスの利用を母親に委ねるのではなく、関係機関が踏み込むべきだった」と話した。【野田樹】