安倍元首相の銃撃事件で、容疑者は動機について、母親が「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」にのめり込み、家庭が崩壊したことなどを挙げている。 事件を受け、親の宗教を理由に、幼少期から自由を奪われてきた「宗教2世」(以下、2世)と呼ばれる人たちが、これまで誰にも言えずに苦しんできた境遇や思いについて、次々に声を上げ始めている。 自らを「宗教2世」と公表するひとりがインターネット上で7月9日から始めた、子どもの信教の自由を守るための法制定を求める署名には、28日時点で賛同数が3万6000人を超えた。 「2世」の現状や、社会的支援はどうあるべきか。長らくカルト宗教の研究をしてきた立正大学心理学部の西田公昭教授に聞いた。 ●児童虐待だと認識されてこなかった ――事件をきっかけにして、2世の方が声を上げ始めている動きや、子ども自らが署名活動で「信教の自由」を訴える思いについて、どのように受け止めていますか? SNSの普及など、さまざまな条件が重なって、ようやく声が届くチャンスがきたのだなという変化があります。同時にそれは、2世の問題は長年存在していたのに、それだけ声をあげることがこれまで難しかったということの裏返しでもあります。 子ども自らが「信教の自由」を訴えることについては、親権者の「信教の自由」が優先され、子どもから自由を奪う親の行為が児童虐待だと認識されないことが背景にあります。 「信教の自由」というものを民法上での「親権」にもしばられることによって、子どもは無理やり、あるいは判断能力が育たないうちに、それを信じ込まされているということが問題です。 ●児童相談所には手が出せず、孤立するしかない ――なぜ2世の問題は児童虐待として取り扱われてこなかったのでしょうか? ひとつに、児童相談所に助けを求めても、こんな問題についての知識がないでしょう。生命身体が脅かされるような緊急的に保護が必要なケースとは異なるほか、仮に一時保護されたとしても、家庭に戻ったあとの生活や教育の支援をすることができないという、児童福祉のシステムとの乖離があります。 さらに、親にたいする子の愛情は深いものがあるわけで、ただでさえ絶縁するのも過酷であるうえ、そうした無力な場所に訴えたとして、結局は家庭に戻されて、さらに悪い環境になるのではと考えると、公的機関に訴えることなど考えられません。 ●「児童虐待に『信仰による虐待』を加えない限り、救われない」
安倍元首相の銃撃事件で、容疑者は動機について、母親が「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」にのめり込み、家庭が崩壊したことなどを挙げている。
事件を受け、親の宗教を理由に、幼少期から自由を奪われてきた「宗教2世」(以下、2世)と呼ばれる人たちが、これまで誰にも言えずに苦しんできた境遇や思いについて、次々に声を上げ始めている。
自らを「宗教2世」と公表するひとりがインターネット上で7月9日から始めた、子どもの信教の自由を守るための法制定を求める署名には、28日時点で賛同数が3万6000人を超えた。
「2世」の現状や、社会的支援はどうあるべきか。長らくカルト宗教の研究をしてきた立正大学心理学部の西田公昭教授に聞いた。
――事件をきっかけにして、2世の方が声を上げ始めている動きや、子ども自らが署名活動で「信教の自由」を訴える思いについて、どのように受け止めていますか?
SNSの普及など、さまざまな条件が重なって、ようやく声が届くチャンスがきたのだなという変化があります。同時にそれは、2世の問題は長年存在していたのに、それだけ声をあげることがこれまで難しかったということの裏返しでもあります。
子ども自らが「信教の自由」を訴えることについては、親権者の「信教の自由」が優先され、子どもから自由を奪う親の行為が児童虐待だと認識されないことが背景にあります。
「信教の自由」というものを民法上での「親権」にもしばられることによって、子どもは無理やり、あるいは判断能力が育たないうちに、それを信じ込まされているということが問題です。
――なぜ2世の問題は児童虐待として取り扱われてこなかったのでしょうか?
ひとつに、児童相談所に助けを求めても、こんな問題についての知識がないでしょう。生命身体が脅かされるような緊急的に保護が必要なケースとは異なるほか、仮に一時保護されたとしても、家庭に戻ったあとの生活や教育の支援をすることができないという、児童福祉のシステムとの乖離があります。
さらに、親にたいする子の愛情は深いものがあるわけで、ただでさえ絶縁するのも過酷であるうえ、そうした無力な場所に訴えたとして、結局は家庭に戻されて、さらに悪い環境になるのではと考えると、公的機関に訴えることなど考えられません。