「何の役にも」「高齢者守る」BA.5強化宣言、対応割れる自治体

新型コロナウイルスの感染急拡大で政府が新設した「BA・5対策強化宣言」を巡り、自治体の対応が分かれている。宣言により、都道府県はワクチン接種の促進や高齢者の外出自粛などを呼び掛けるが、罰則はなく、内容も自治体任せだ。「高齢者を守るため」と宣言に踏み切る地域がある一方、「何の役にも立たない」と懐疑的な声も上がっている。
強化宣言は7月29日に新設を決定。①病床使用率が50%超または昨冬のピーク時を超える②入院患者がおおむね中等症以上等の入院を必要とする――の二つを満たすなど、医療負荷が増えている場合、都道府県の判断で出せる。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置と異なり、事業者への営業時間短縮要請などはしない。国は強化宣言をした都道府県を「BA・5対策強化地域」に指定し、リエゾン(連絡員)の派遣など感染対策を支援するが、協力金支給などの財政支援はしない。内閣官房によると、「医療非常事態」など同等の宣言をした自治体も含め、9日時点で19府県が指定された。
「注意喚起をステップアップするために活用する。強制力を伴わず、強い呼び掛けにとどまるとはいえ、必要な対策だ」。愛媛県の中村時広知事は9日の記者会見で、BA・5対策強化宣言を発令。会食時には大人数・長時間を避け、高齢者には混雑した場所への外出を控えるよう求めた。
同県では9日、病床使用率が初めて60%を超え、新規感染者も2841人と過去最多を更新。第7波の死者数は39人に上り、第1波以降の累計死者数の2割超を占める。中村知事は「感染のピークはまだ先だ」と危機感を募らせる。
岡山県も5日、強化宣言を出し、高齢者らに混雑した場所への外出を控えるよう呼び掛けた。伊原木隆太知事は「国の制度に乗った方が(県民の)空気感が変わる。低く抑えられていた病床使用率が50%を超え、急速に上昇している。高齢者を守るために必要だ」と強調した。
一方、和歌山県の仁坂吉伸知事は4日の記者会見で「何の役にも立たない」と強化宣言をばっさり否定した。同県では9日、過去最多の1973人の感染が確認され、病床使用率が7割超の状態が続く。仁坂知事は「大変な危機感をもって対応している」とした上で、「保健所の機能を外部委託して(職員らを)楽にさせるためのお金を(自治体に)あげるというのであれば喜んでするが、政府の専門家に来てもらっても邪魔なだけだ」と批判した。
兵庫県も強化宣言を発令しない方針だ。斎藤元彦知事は「すでに同様の措置を取り、高齢者も感染防止対策をしっかり取っている。過度な行動自粛を求めると認知症悪化やフレイル(衰え・虚弱)につながる可能性がある」と指摘。
感染拡大対策として、無症状や軽症の場合は医療機関を受診せず、検査キットで自ら陽性かどうかを調べ、自主療養してもらう制度を導入した。その場合は発生届も求めず、保健所の負担も軽くする。斎藤知事は「全数把握は重症化率が高い感染症を把握するための措置だが、発生届の膨大な統計作業に多くの職員が忙殺され、重症化リスクの高い方のケアに支障が生じている」として全数把握の見直しも訴えている。【鶴見泰寿、堤浩一郎、山口智、井上元宏】
「BA.5対策強化地域」に指定した19府県(9日現在)
宮城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、岐阜、静岡、愛知、三重、京都、大阪、岡山、愛媛、福岡、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄