政界マル秘紳士録 岸田文雄首相 「早めの対応」で内閣改造・党役員人事 情報の真贋を聞き分け、挙党体制を築けるのか

岸田文雄首相は10日、内閣改造・党役員人事を行う。もともと、秋の臨時国会の日程を考えると、「参院選後の臨時国会終了後に行う」との見方はあった。しかし、安倍晋三元首相が凶弾に倒れたことを受け、「四十九日」以降の9月初旬に遅らせるとの予測が一般的だった。
再び、当初予定していた日程案に戻ったのは、新型コロナウイルス「第7波」の感染拡大や、台湾情勢、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と閣僚らの関係など、内外の情勢緊迫化が背景ではないか。また、秋の臨時国会に向け、経済対策を早期に策定するとの判断があるのかもしれない。
いずれにせよ、岸田首相の政権運営は、衆院選期日の前倒しなどに象徴されるように「早めの対応」を基本としており、今回も同様に判断したということだろう。
岸田首相は内閣改造・党役員人事に関して、「有事の体制であるという緊張感を持って臨まなくてはならない」と述べたうえで、「誰に頑張ってもらうことが全体の結束につながるか考えたい」との認識を示している。この言葉にウソはないだろう。
一部には、「安倍氏の急逝により、岸田首相の一強体制となる」との見方もあるが、むしろ、最大派閥・安倍派の流動化リスクは「政局の不安定要因」といえる。これまで以上に各方面に目配り、気配りをしながらの政権運営が求められることになるのではないか。
また、今回の人事では、主流派・非主流派を超えた、思い切った人材登用が行われることになるだろう。現在の主流派・非主流派の枠組みは、昨年秋の総裁選で岸田首相を支持したかどうかによるものだ。しかし、そこに拘泥していては、いつまでも「決選投票の末に僅差で選ばれた総裁」から脱却することができない。今回の人事はその良い機会だろう。
内政における最大の課題だった参院選は、自民党が改選63議席を獲得し、単独で改選過半数(63議席)を確保する圧勝であった。コロナの感染状況や食料や燃油などの高騰など、さまざまな不安要因もあったが、終わってみれば昨年秋の衆院選に続く、国政選挙2連勝である。これにより、「脆弱(ぜいじゃく)」とされた政権基盤が大きく強化されたことは間違いない。
政権運営で最も注意しなければならないことは、「良い情報しか入ってこなくなる」ことだ。都合の悪い情報が入ってこなければ、甘い見通しに基づく、誤った判断が行われることになる。政権基盤が強くなればなるほど、この危険性は高まる。
果たして、岸田首相が情報の真贋(しんがん)を聞き分け、意図する挙党体制を築くことができるのかどうか。「聞く力」をアピールしてきた、岸田首相の真価が問われる夏となりそうだ。 (政治評論家・伊藤達美)