国防に不安あり 陸自第1師団長が語る首都防衛力の本音 国が蹂躙されれば国民の命運も消える 岸田政権に求められる「憲法改正」と「防衛力強化」

国を守るのは、その国の軍隊だ。国際社会は必ず、ともに戦ってくれるとはかぎらない。政府は今年、外交・安全保障政策の根幹である「戦略3文書」、つまり「国家安全保障戦略」と、「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の改定作業を行う。
「国家安全保障戦略」とは、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策に関する基本方針を定める文書である。
「防衛計画の大綱」は、おおむね10年先の中長期的な視点で、日本の安全保障政策や防衛力の規模を定めた指針。これに基づいて5年ごとに具体的な政策や装備調達量を「中期防衛力整備計画」で決める。
安倍晋三元首相が凶弾に倒れた現在、好むと好まざるにかかわらず、岸田文雄政権に今後10年の、わが国の安全保障の生殺与奪の権が握られているのだ。
こうしたなか、4月10日の第1師団創立60周年記念式典で、首都圏を守る陸上自衛隊第一師団、兒玉恭幸(こだま・やすゆき)師団長の式辞が、動画配信サイトを通して話題となっている。一部を抜粋紹介する。
「ウクライナの人口は4100万人。陸軍は約10万人であります。一方、第1師団が担当する1都6県で4400万人。ウクライナとほぼ同じですが、担当する第1師団は約6000人。『4400万人を第1師団だけで守り切れます』と、私は言い切ることができません」「われわれが首都圏を守り抜くためには警察、消防、海上保安庁との連携はもちろんのこと、地元の市民の皆さまのご支援、ご協力が不可欠であります」
現役の自衛隊幹部が、このような切実な問題を語ったのだ。自衛隊の体面を取り繕う人が多いなか、よくぞ言ってくれた。こうした本音を政治家が理解して、初めて国防政策を論じることができる。
「今年、国家存亡にかかわるような不測事態が起こらないとも限りません。国家存亡の危機にあたっては、われわれ第1師団が首都機能を維持するため、危険を顧みず、身を挺して行動します。第1師団は最後の最後の砦(とりで)です。第1師団の敗北は、主権の喪失を意味します。主権の喪失とは、この地球上に日本という国がなくなることです。ただし、第1師団約6000人のみで首都機能を維持することは不可能です」
この式辞で、首都防衛の自衛隊戦力が、いかに心もとないかを実感する。人員数だけをとらえても、首都圏を守れる隊員ではない。定員を増やす予算は必須だ。少子化で人が集まらないなら、賃金を上げ、待遇を改善し、誰もが自衛官という職業に憧れる職場にしなければならない。誇りだけでは自衛隊員は集められない。
国が蹂躙(じゅうりん)されれば、国民の命運も消える。国民は昨年の衆院選と先の参院選で、憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席を、改憲勢力に与えた。岸田政権はその意味を心臓に刻み、躊躇(ちゅうちょ)せず国防に必要な予算、必要な法制度改革を断行していただきたい。
■小笠原理恵(おがさわら・りえ) 国防ジャーナリスト。1964年、香川県生まれ。関西外国語大学卒。広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」代表。現在、日刊SPA!で「自衛隊の〝敵〟」を連載中。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。