在日コリアンが暮らしてきたウトロ地区(京都府宇治市)の空き家や、在日韓国人の関連施設に放火したなどとして、非現住建造物等放火罪などに問われた奈良県桜井市、無職有本匠吾被告(23)に対し、京都地裁は30日、求刑通り懲役4年の判決を言い渡した。
増田啓祐裁判長は「在日韓国人、朝鮮人に偏見と嫌悪感を抱いた身勝手な犯行で、刑事責任はかなり重い」と述べた。
判決によると、有本被告は昨年8月30日、ウトロ地区の空き家にライターで火を付け、計7棟を燃やしたほか、同7月24日には名古屋市の在日本大韓民国民団(韓国民団)愛知県地方本部と、隣接する名古屋韓国学校に放火し、本部の壁面や学校の芝を損傷させた。
増田裁判長は判決で、有本被告が事件直前に勤務先の病院を辞めて自暴自棄になり、社会から注目を集めようと事件を起こしたと指摘。その上で、被告には在日韓国人らに対する偏見と嫌悪感があったと認め、「民主主義社会において、被告には相当、厳しい非難が向けられる」と述べた。
◆ウトロ地区=太平洋戦争中の京都飛行場建設で集まった朝鮮半島出身の労働者ら約1300人の一部が、戦後も家族らと住み続けた2・1ヘクタールの地域。1980年代まで上下水道が整備されず、住民は劣悪な生活を強いられた。土地を所有する不動産会社が明け渡しを求めて提訴し、2000年に立ち退きを命じる判決が最高裁で確定した。韓国政府の支援や民間の寄付で住民側が買い取った土地の一部に市営住宅が建ち、約90人が引っ越しを進めている。
被告、「ヘイトクライム」否定できず
有本被告は判決前の今月18日、京都拘置所で読売新聞記者との面会に応じ、「自分の行動がヘイトクライム(憎悪犯罪)や差別にあたるかと言われたら否定はできない」と語った。
ウトロ地区について「反日活動の拠点」と独自の主張を展開し、地区の歴史を伝えるウトロ平和祈念館の開館を阻止することが放火の狙いだったと説明。「殺してしまえ、とまでは思っていないが、韓国に対する排外感情があり、国外に追放したいとの意味合いがあった」と話した。
一方、韓国民団施設への放火に関しては「韓国民団が反日活動をしているという認識違いをしていた。私の誤りだった」と反省を口にした。