エリザベス女王の国葬で訪英 天皇が葬儀に参列するのは異例なこと【皇室のトリビア】

【皇室のトリビア】#85
96歳で死去した英国のエリザベス女王の国葬に、日本から天皇皇后両陛下が参列された。両陛下が外国を訪問されるのは、即位以来初めてのことで、皇后さまも2015年にトンガを天皇陛下と共に訪問されて以来7年ぶりのことだ。
「コロナ禍が広がってから都内へのお出ましはあっても、地方へのお出ましはありませんでした。どうなるのかと心配しておりましたが、これで少し安堵いたしました」と宮内庁関係者は言う。
それにしても、即位後に初の海外訪問が英国だったというのは納得できるが、それがエリザベス女王の国葬だったというのはちょっと驚きだ。宮内庁によれば、天皇が外国の王室や元首の葬儀に参列するのは極めて異例のことで、1993年に天皇皇后だった現在の上皇ご夫妻がベルギーのボードワン国王の国葬に参列されて以来で、今回は2度目である。天皇が国葬に参列されたのは、もちろん英国王室から招待状が届いたことや、2年前の2020年にエリザベス女王から招待されていたのに、新型コロナのために延期になったことも背景にあるのだろう。
■古くから続いてきた“ケガレ思想”
天皇が葬儀に参列するのはめったにない。それは、古くから続いてきたケガレ思想が影響していると言われる。安倍元首相の「国葬」などには侍従などを使者として遣わすのが慣例になっているのもそうだ。明治以前は葬儀に参列することは皆無だったが、近代化にそぐわないということでゆっくりと改革され、明治天皇の大喪で大正天皇が初めて葬儀に参列している。その後、大正天皇が亡くなる数カ月前に皇室喪儀令ができたが、天皇が葬儀に参列するのは、先の天皇や皇太后など近親者に限定していた。だから国民の感覚とはずいぶん違っている。戦後もこれを踏襲してきたのだろう。
では上皇ご夫妻がなぜ異例ともいえるベルギー国王の国葬に参列されたのか。それはさらに40年前にさかのぼる。1953年、当時19歳の皇太子だった上皇さまは、エリザベス女王の戴冠式に参列するために訪英したが、当時は第2次世界大戦から8年しか経っておらず、敗戦国の日本からやってきた皇太子ということで英国社会は冷淡だったようだ。式で用意されたのも末席だった。もっともエリザベス女王らは手厚く迎えてくれたという。
その後、欧州各国や米国を約半年かけて訪問したのだが、この中でベルギーを訪問した日々が最も楽しかったと、上皇さまは述懐されている。旧敵国の皇太子を古くからの友のように歓迎してくれたようだ。さらに昭和天皇の大喪の礼では、国内世論を考えて、ヨーロッパの王室から参列したのは皇太子などだったが、ベルギーは国王が自ら出席した。そんなことが、これまでの慣例を破って上皇さまがベルギー国王の国葬に参列された理由だろう。では、天皇陛下がエリザベス女王の国葬に参列するのはどんな理由だろうか。
天皇陛下は、1983年から2年間、オックスフォード大学に留学されたが、滞在中にスコットランドのバルモラル城に招かれ、エリザベス女王と夫のフィリップ殿下と家族のように過ごされたという。その後もイギリスを訪問しているが、むしろエリザベス女王と親密な交流を続けてきたのは上皇さまではなかっただろうか。しかし、今の上皇さまが訪英するには体力的に難しく、おそらく天皇陛下の弔問は上皇さまの名代という意味合いもあったのだろう。