「風化懸念」「必要ない」市民賛否 奈良市の判断、識者は非難

安倍晋三元首相の銃撃事件の現場に慰霊碑などの記録を一切残さないという奈良市の決断に、地元住民からは賛否の声が上がった。「世界の要人が現場を訪れたら驚かれる」などと識者からは強い批判も出た。
パート従業員の林山都子さん(67)は「道路に整備するのは反対ではない。大きな事件だったが、わざわざ慰霊碑などで残す必要はない」と話す。一方、飲食店長の堀江裕樹さん(31)は「教科書に載るレベルの事件。後日談で語れるよう、現場周辺の邪魔にならない場所に慰霊碑があってもよかったのでは」と疑問を呈した。
自民党の男性市議は「市民の間でも賛否の議論があったので、花壇で弔意を示すことで落ち着いてよかったと思う」と述べた。別の市議は「慰霊碑を建てないというのは、追悼に訪れた人たちに対して不親切すぎる。現場が車に踏まれるということも抵抗がある。何もないのは風化しかねず、考え直すことも必要なのでは」と強調した。
「絶対におかしい」門田隆将氏が批判
「日本がテロに屈しない国だと国内外に示すという意味でも、モニュメントは設置すべきだ。絶対におかしい」。作家でジャーナリストの門田隆将氏は、事件現場を「自由と民主主義に対する挑戦を受けた最前線」と定義し、奈良市の判断を強く批判する。
門田氏は、花壇を設置しただけでは「まったく意味がない」と憤る。事件直後に現場を訪れ、多数の献花を目にしたといい、「多くの人が弔意を示した事実に対し、奈良市はきちんと対応すべきだ」と求めた。
また、国際社会からの厳しい視線も危惧する。「今後、世界の要人が事件現場を訪れた際、モニュメントすらないことに驚くだろう。日本はテロを容認する国なのかと国際社会に見られるのは恥ずべきこと。奈良市長は歴史に汚名を残すことになる」