遺族「私たちは今も事件の中に」 神戸市高2刺殺事件から12年

神戸市北区で2010年、私立高2年の堤将太さん(当時16歳)が刺殺された事件は4日で発生から12年を迎えた。21年8月に逮捕された当時17歳の元少年(29)は5カ月間の鑑定留置を経て1月に殺人罪で起訴され、今後、裁判員裁判で審理される。堤さんの父敏さん(63)は「何年たっても10月4日は息子の命日。元少年が捕まっても、私たちは今も事件の中にいる」と話す。
起訴状などによると、元少年は10年10月4日夜、神戸市北区筑紫が丘4の路上で、少女(当時15歳)と座って話していた堤さんを折りたたみ式ナイフで複数回刺すなどして殺害したとされる。争点を絞り込む公判前整理手続きが進むが、弁護側が精神鑑定を請求し、神戸地裁が2回目の鑑定留置を決定した。
事件当時17歳だった元少年には少年法が適用される。少年法は更生を目的とすることから事件当時18歳未満への死刑を禁じ、無期懲役が相当と判断された場合も有期刑を科すことができる。敏さんは「警察の捜査能力が向上し、事件から何十年もたって容疑者が逮捕される可能性もある。元少年は10年10カ月、逃げ続けることで罪を重ねていると感じている。そんなふうに成人したのに少年法で更生させるというのはおかしい」と語った。
関係者によると、元少年は逮捕時に容疑を認めていたが、公判では殺意を否認するとみられる。事件前に精神科で適応障害などと診断された通院歴があり、弁護側は公判で心神喪失による無罪主張も検討しており、精神鑑定の結果を踏まえて弁護方針を決めるとみられる。敏さんは「息子を殺しておいて裁判で争う姿勢なのか。息子が何か悪いことしたのか」と憤る。
敏さんら遺族は被害者参加制度を利用し、公判で元少年に直接質問して量刑について意見を述べる予定だ。「一度も謝罪のない元少年に、息子に何をしたか分かっているのかと尋ねたい。公判は早ければ数日で終わってしまうが、元少年がなぜ捕まらずに10年以上も逃げられたのか、真相が明らかになってほしい」と期待した。【村田愛】