小笠原諸島(東京都小笠原村)で生まれた絶滅危惧種「アオウミガメ」の赤ちゃん2頭が、すみだ水族館(墨田区押上1)で今月から公開され、水槽内を元気に泳ぎ回っている。外敵に襲われにくい大きさに成長するまで約1年かけて育て、故郷の海へ返す計画だ。2023年8月下旬までの公開を予定している。
11年6月に世界自然遺産に登録された小笠原諸島は、国内最大のアオウミガメの産卵地。同館は12年の開業当時から同村と連携し、アオウミガメの保全活動に参画している。赤ちゃんを預かり館内で育てた後、ふるさとへ放流する役割を担ってきた。
同館によると、アオウミガメは国際自然保護連合(IUCN)や環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。一度に100個以上の卵を産むが、多くは1年以上生きられない。甲羅の大きさが25~30センチ程度まで成長すれば外敵に襲われにくく、生存率は高まるという。
公開されている2頭は7月28日に生まれ、同館スタッフが現地に行って預かってきた。甲羅は10月10日時点でいずれも11センチ前後。時折、水面から小さな顔をひょっこりとのぞかせる。海藻やエビ類の餌を食べたり、泳いだりする様子を観察できる。
成長の過程が分かる体重などの測定データや、飼育スタッフの手描きの観察メモもパネル展示している。
2頭には名前がないが、同村立小笠原小5年生の児童が名前を考え、決まり次第、同館公式ウェブサイトやツイッターで発表する。同館は「2頭の姿をきっかけに、小笠原の海や環境保全について関心を持ってもらえたら」としている。
また、昨年10月2日から約1年にわたり同館で過ごし、今月7日に小笠原の海へ戻ったアオウミガメの「かなめ」を放流する様子を記録した映像も15日から館内で放映している。【千脇康平】