音楽教室のレッスンで行われる演奏に楽曲の使用料を支払う必要はあるのか-。日本音楽著作権協会(JASRAC)と、音楽教室を運営する団体・事業者との間で争われている訴訟の判決が24日、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)で言い渡される。ポイントは楽曲の「利用主体」で、実際の演奏者ではなく、その背後にいる教室側が利用しているとみなせるかどうかだ。
JASRACは平成29年、著作権で保護された楽曲を使っている音楽教室に対し、年間受講料収入の2・5%を楽曲の使用料として徴収すると発表。教室側は「使用料の請求権は存在しない」と反発、東京地裁に提訴した。
著作権法は、「公衆」に直接聞かせる目的で演奏する権利(演奏権)は、楽曲をつくった側が保有すると定める。訴訟では、音楽著作物を利用している「主体」は、演奏する教師や生徒なのか、教室側なのかが最大の争点となった。
1審東京地裁は、自身が管理する施設で指導のために演奏させ、収益を上げている音楽教室の事業者を利用主体だとみなした上で、生徒は公衆に当たると認定。演奏者が教師か生徒かを問わず、使用料の支払い対象になるとして、教室側の訴えを退けた。
これに対し2審知財高裁は、教師の演奏は1審同様、支払い対象になるとした一方、生徒の演奏については「指導を受けるために(公衆ではない)特定の教師に聞かせているものだ」と指摘。楽曲の利用主体は生徒自身であり、使用料の支払い対象にはならないと結論づけた。
著作物の利用主体を巡っては、昭和63年の最高裁判決で、カラオケスナックで客が歌う行為について、カラオケ設備を設置している店側が演奏権を侵害していると認定された。個別事例についての判断だったが、「カラオケ法理」と呼ばれ、同種訴訟でたびたび引用されてきた。
今回の1、2審判決も、この判例を参考としたが、「主体」のとらえ方で判断が分かれた形に。論点は「生徒の演奏に関し、音楽教室側が音楽著作物を利用しているといえるか」に絞り込まれた。
9月29日に開かれた上告審弁論でJASRAC側は「(使用料の)徴収に応じることで、音楽文化の発展に寄与してほしい」と要望。教室側は「2審判決は極めて妥当。社会通念に即した判断をすべきだ」と反論した。弁論は2審判決を変更するのに必要な手続きだが、2審の結論通りとなる場合もある。最高裁の判断が注目される。
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著作権 音楽や小説、映画などの「著作物」を創作した人(著作者)に与えられる知的財産権の一つ。印刷、写真や録音、録画などの「複製権」、著作物を見せたり聞かせたりする「上演・演奏権」、テレビやラジオ、インターネットなどによる著作物の送信に関する「公衆送信権」など利用方法によってさまざまな権利が定められており、利用する際には著作者の許可が必要になる。