記録廃棄、奈良・母子3人放火殺人も 供述調書漏えいの事件

重大な少年事件の記録を各地の裁判所が廃棄していた問題で、2006年に奈良県田原本町で母子3人が死亡した放火殺人事件の記録を奈良家裁が廃棄していたことが判明した。この事件では、当時16歳だった長男が少年審判で保護処分となったが、供述調書が外部に漏えいする問題が起きた。家裁は廃棄について「保存期間を過ぎたため」と説明している。
家裁によると、記録を廃棄したのは17年3月。最高裁の内規では、少年が26歳に達するまで保存すると規定している。社会の耳目を集めた事件などを永久的に保存する「特別保存」にしなかった理由は「答えられない」としている。
事件は06年6月20日に発生。医師宅が全焼し、妻(当時38歳)と小学2年の次男(同7歳)、保育園児の長女(同5歳)が死亡した。高校1年だった長男が殺人と現住建造物等放火などの非行内容で送致され、中等少年院送致の保護処分を受けた。
事件を巡っては、長男の供述調書を引用した単行本が07年5月に出版された。家裁の嘱託で精神鑑定をした医師が調書の写しなどを著者のジャーナリストに見せたとして、刑法の秘密漏示容疑で逮捕され、有罪判決が確定した。【吉川雄飛】