医師「まるでブラック企業だった」…「全数把握」見直し1か月、作業大幅減を歓迎

全ての新型コロナウイルス感染者を確認する「全数把握」が見直されてから、26日で1か月が過ぎた。見直し後の9月26日~10月26日に診断・登録された9671人のうち、高齢者ら重症化リスクの高い感染者のみとなった発生届の対象者は約15%の1493人だった。医療現場は作業量の大幅軽減で好意的に受け止めているが、実際に見直し後の仕組みがうまく機能するかどうかは、次の感染拡大時に試されることになりそうだ。
青森県弘前市の沢田内科医院では24日午前、約20人が受診したが、届け出対象となった患者はほとんどいなかった。1日で最大約90人に上った今夏に比べ、隔世の感がある。当時は発生届の作成でスタッフの残業が慢性化し、沢田美彦医師は「まるでブラック企業のようだった。事務作業に追われていた日々が終わってよかった」と見直しを歓迎する。
現在、届け出対象でない患者は年代別に感染者数を入力するだけだ。かつて最大約4時間かかっていた作業は1分程度で済む。懸念される第8波はインフルエンザとの同時流行も想定され、沢田医師は「病院の本分は事務作業ではなく医療。これからは、患者の状況把握や治療に集中したい」と力を込めた。
保健所の業務量も軽減された。八戸市保健所が24日に受理した発生届は16件。7月は1日で600件を超え、保健所職員だけでは間に合わず市役所から35人の応援を受けて対応していた。
全数把握の見直しは、作業量の減少で浮いたマンパワーを重症化リスクの高い感染者に振り分けるのが狙いだ。一方で、低リスクでも容体が悪化する場合があり、見直し後は発生届の対象外となった感染者の急変をどのように把握するのかが課題とされている。
県内では、対象外の感染者は「県自宅療養者サポートセンター」などに連絡すれば電話診療や宿泊療養などの支援が受けられる。県によると、見直し後は感染が落ち着いていたのもあり、センターへの電話診療は1日3~4件にとどまる。ただ、最近の感染者数は増加傾向にあり、感染がさらに拡大すれば重症者や問い合わせが増え、医療機関やサポートセンター、保健所の業務が再び

逼迫
(ひっぱく)したり混乱が生じたりする可能性もある。
県の小笠原俊彦・新型コロナウイルス感染症対策監は「感染者が少ない時期だったので、大きな混乱もなく移行できた。しかし、真価が問われるのは感染拡大時で、負担を分散しながら準備を進め、県民に医療が行き渡るよう対応していく」と述べた。