中華料理チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービス(京都市山科区)の社長だった大東隆行さん(当時72歳)が2013年に射殺された事件で、北九州市の特定危険指定暴力団・工藤会の関与が浮上した。工藤会とは、どんな組織なのか。
工藤会は北九州市に拠点を置く暴力団で、福岡県警によると、1946年ごろに結成された。北九州に進出を図った指定暴力団・山口組と63年や00年に抗争を繰り広げるなど、武闘派として知られる。
暴力団に利益供与した事業者への罰則を定めた福岡県暴力団排除条例が施行された10年以降、県内では一般人への切り付けや放火、手投げ弾の投てきなど30件以上の襲撃事件が起きた。
県警は複数の事件に工藤会が関与したとみて、捜査を強化。意に沿わない一般人への襲撃などを繰り返す悪質さから12年12月、工藤会は改正暴力団対策法に基づき、全国唯一の「特定危険指定暴力団」にも指定された。
県警は14年9月、工藤会壊滅を目指す「頂上作戦」に着手。組織トップで総裁の野村悟被告(75)と、ナンバー2で会長の田上不美夫被告(66)ら幹部を相次いで逮捕した。
両被告は、98年に元漁協組合長が射殺された事件など市民襲撃4事件で殺人罪などに問われ、福岡地裁は21年8月、上位者の指示は絶対とする工藤会の強い組織性を背景に、実行役の組員らとの共謀をいずれも認定。野村被告に死刑、田上被告には無期懲役の判決を言い渡し、両被告とも控訴している。
頂上作戦による相次ぐ組員の逮捕や、トップに対する死刑判決の影響を受け、工藤会は弱体化が進む。暴排条例による締め付けで、かつては飲食店などから吸い上げていた「みかじめ(用心棒代)」料収入も先細り、資金力も低下しているとみられる。
21年末時点の勢力は準構成員などを含め、県内だけで370人とピーク時だった08年(1210人)の3分の1以下にまで減少した。一方、首都圏で「半グレ」と呼ばれる若者を引き入れ、特殊詐欺など資金獲得活動を進めているとの情報もあり、県警は警戒を強めている。