11日に発足した第4次安倍再改造内閣で、自民党の石破茂元幹事長率いる石破派(水月会、19人)は入閣者がゼロとなった。
石破氏は安倍晋三首相の政権運営への批判を強める構えをみせるが、一方で「ポスト安倍」のライバルが軒並み重要なポジションに起用されたことで、トップを目指す立場からすれば、存在感が一層埋没しかねない。それでも石破派を取材すると、メンバーは一様に明るい表情をみせる。なぜか。
「昨年3月の党大会で、挙手を求めたり起立を求められた記憶はまったくない。民主主義はプロセスだ。ルールを曲げたら何でもできてしまう」
石破氏は20日のBSフジ番組でこう述べ、憲法9条への自衛隊明記など4項目の党改憲案が昨年3月の党大会で了承されたとする首相の考えに「党議決定を経ていない」と反論してみせた。
石破氏は、首相が主導した自衛隊加憲案についても「書くだけで何も変わらないなら議論の優先順位は高くない。政治のかけられるエネルギーには限りがある」とも強調した。これまでも、石破氏は首相が唱える憲法改正の考え方に持論を展開してきている。
今回の内閣改造で、石破派の入閣者は平成27年9月の派閥発足以来、初めてゼロとなった。副大臣ポストでも、平将明元内閣府副大臣が再登板したのみだ。
昨年の総裁選直後の同年10月の内閣改造では、当選3回の山下貴司衆院議員が法相に起用された。当時、石破氏は山下氏が担当する外国人労働者の受け入れ拡大を図る改正出入国管理法(入管法)をめぐる議論への批判は表だっては封じていた。
石破派の閣僚経験者は「今回は干してもらった方がありがたい。気兼ねせずに言いたいことが言える」と語る。とはいえ、入閣者ゼロという事態は、石破派の党内外での存在感をいっそう低迷させかねない。
首相の側近は、「今回の改造で首相は昨年の総裁選の対応を徹底して人事に反映させた。石破氏が現職の首相に挑戦したからには相応の覚悟が求められるということだ」と“石破派外し”の背景を解説する。
石破氏は13日、内閣改造の顔ぶれについての感想を記者団に問われ「人事権は首相がお持ちなので、あれこれ言うべきじゃない。石破派には、この人がこの分野をやったら素晴らしいなと思う人はたくさんいる」と恨み節をこぼした。
ただ、石破氏のぼやきとは異なり、今回の人事をめぐり、派内で悲観的な声は目立たない。内閣改造翌日の12日に石破派が開いた会合では、派の事務総長を務める田村憲久元厚生労働相が「入閣はゼロだったが明るくやっていこう」と強調。斎藤健元農林水産相や山下氏も異口同音に続き、穏やかな雰囲気に包まれた。
石破派の関係者は「入閣者ゼロの方が、派の結束も強まるだろう」とも語る。
楽観的な理由の一つにあるのが、首相が党総裁の連続4選論を否定していることだ。石破派の幹部は「首相はもうライバルにはならない。今回の人事で冷遇されても、次が勝負だ」と次期総裁選を見据えてこう語り、現段階の“冷や飯人事”も意に介さない。
石破氏が首相に遠慮なく持論を展開すれば、現政権との路線の違いを印象づけられ、安倍政権に対する飽きや批判層の受け皿となり、存在感も高まるとの見方がある。
もう一つの理由が、石破氏が「ポスト安倍」候補に比べ党員票の支持固めで先行していることだ。石破氏は首相と一騎打ちとなった昨年の総裁選で、党員票の45%を獲得した。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が14、15両日に実施した合同世論調査で、次期首相に関する質問で、石破氏は16%の支持を得た。「令和おじさん」として知名度が急上昇した菅義偉官房長官でも6・3%。首相からの「禅譲」がささやかれる岸田文雄政調会長は5%だった。
しかし、先の総裁選以降、石破氏のメディアへの露出は減り、頼みの綱とする地方での人気が下降傾向にあるのは否めない。昨年10月の世論調査では、石破氏は同様の質問で27・6%。今年4月の調査でも20・7%を得ていた。石破氏にとって、首相と距離を置く独自路線にリスクがあるのは間違いない。
(政治部 奥原慎平)