ニュース裏表 田中秀臣 高所得者の介護保険料引き上げ「取れるところから取る」の罠 厚労省、自らの制度原則を無視「財源」集めに躍起

少子高齢化が急速に進む日本では、介護に関する問題は重要だ。介護費用は総額で12兆円に迫っている。要介護や要支援認定者数は、最新の統計では682万人。今後、2040年頃に高齢化はピークを迎えるので、介護が必要な人もどんどん増え続ける。
介護の社会的必要性は高まることはあっても減ることはない。介護制度の最大の問題は介護が必要な人たちをどう経済的に支えていくかだ。
日本の介護制度は事実上「賦課方式」で運営されている。介護給付費の半額は税金で調達し、残り半分を65歳以上の人と40~64歳の人たちに分けて、それぞれ介護保険料として負担している。両方の負担額はだいたい同じで、月平均6000円ほどである。
だが、政府の推計では、40年には負担額は9000円台までに上昇する。しかも介護の質を維持するためには、どうしても現在の介護労働者の不足を解消する必要がでてくる。そうなると、今の低賃金・重労働の環境の改善をするには、さらに追加して介護保険料を引き上げなくてはいけない。介護制度の財政の維持可能性が待ったなしの争点になっている。
最近、厚生労働省は、65歳以上の高所得者の介護保険料を引き上げる方針を出した。これは学習院大学の鈴木亘教授が指摘するように、厚労省が「取れるところから取る」という安易な方針の表れだ。
介護保険制度は、応益原則を採用している。つまり介護リスクが高い人ほど保険料を引き上げるのが原則だ。だが、「取れるところから取る」という厚労省のやり口は、応能原則といい、違ったものだ。つまり厚労省は自らの制度の原則を無視した「財源」集めに走っているのだ。
だが、このように批判すると、一般人どころか経済学者でさえ、「高所得者から取るのは当たり前」という指摘がある。こういう意見こそが、実は厚労省や、その裏にいる財務省の狙いだ。
ただでさえ、介護給付費の半分に税金が割り当てられている。これも応益原則とは違うものだ。「取れるところから取る」方針を放置してしまえば、やがて消費増税で「財源」確保を狙うだろう。
最近、政府税制調査会では、さらなる消費増税をすべきだとの意見も出てきた。介護制度の拡充を口実に、消費増税を訴える政治家、識者、官僚、マスコミ、財界らがうごめきだしてもなんの不思議もない。
私たちが若いうちから介護保険料を自分のために積み立てる方式に転換するべきである。それこそが、増税主義者の狙いを打ち砕くだろう。 (上武大学教授)