「ギャー」逃げ回る子の悲鳴 沖縄の島々に現れる“異郷”の神 神様を悩ます苦情の正体

妖怪? それともハロウィーン? いいえ、神様です。九州の南から沖縄、台湾まで連なる「琉球弧」の島々には、この世のものではない見た目で祭りや年中行事に登場する仮面や仮装の「来訪神」が数多くいます。沖縄美ら島財団は10月16日、海洋博公園内にある海洋文化館で、そんな神々を紹介する講座を開きました。ただ、後継者がいなかったり、観光客から苦情が出たり…神様もさまざまな悩みを抱えているようです。
「ギャー」。悲鳴を上げながら夜の通りを逃げ回る子どもたちに、泥まみれの来訪神「パーントゥ」3体が迫ります。車の中に隠れてもドアを開けて入ってきて、顔や服にべったり泥を塗られました。
新築の家にも泥を塗って回り、厄(災い)をはらいます。約30年前、1994年に撮影された宮古島市平良島尻の伝統行事「パーントゥプナハ」のビデオ映像の様子です。
「昔の島尻の子どもは『パーントゥが来るぞ』と言えば、すぐにおとなしくなったそう」。
美ら島財団総合研究センターの板井英伸さんが説明しました。決まった時期に、もう一つの世界「異郷」から現世に現れる神が「来訪神」です。2018年にパーントゥを含め、来訪神が登場する国内8県の10の行事が国連教育科学文化機関の無形文化遺産に登録されました。
来訪神には悪霊など悪いものをはらったり、豊作や集落の繁栄を祈ったりする役割があります。板井さんによると、共通点は異様な姿をした神様が現れる太鼓の音を伴っている家々を回る-だそうです。
講座では板井さんが準備した映像が次々と流されました。パーントゥに加え、国頭村安田のシヌグや那覇市首里赤田のみるくウンケー、石垣島のアンガマ、西表島のミリクやオホホなど、多彩な表情をした仮面、仮装の来訪神が紹介されます。「琉球弧には本当にたくさんの神様がいるのに、調査は不十分」
行事のやり方も変わってきました。観光客が増えたパーントゥは近年、行事本来の意味を知らない観光客らから「泥で服を汚された」など苦情が出るようになりました。そのため、冷やかし客を遠ざけたり、パーントゥがやり過ぎないよう注意する人を付き添わせるようになりました。
また、観光客が集まり過ぎないよう、日程を直前まで非公開にするなど工夫しています。
コロナ禍の影響で今年、3年ぶりに再開された行事でも、パーントゥ相手にふざけるような観光客がいたそうです。板井さんは「パーントゥとの鬼ごっこのように思っている人が増えている」と問題視します。
「どの行事も人口減少による後継者不足で、昔のようにはできなくなっている。後世に伝えるために、例えば外部の人を参加させるかどうかなど、集落の人たちが悩んでいることを知ってほしい」と呼びかけました。
文・又吉嘉例