「絞首刑は国際法違反」 死刑囚3人が執行差し止め求め提訴 大阪

絞首刑は残虐な刑罰を禁じる国際法や憲法に違反するとして、大阪拘置所に収監されている死刑囚3人が29日、国に死刑執行の差し止めや計3300万円の賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。代理人弁護士は「日本の死刑制度のあり方を改めて問う」と訴えている。
提訴したのは、いずれも死刑確定から10年以上が経過している3人。うち2人は刑事裁判のやり直しを求める再審請求中だが、代理人は3人の氏名を明らかにしていない。
原告側は訴状で、日本が批准している国際人権規約(自由権規約)は非人道的な刑罰や恣意(しい)的な生命の剥奪を禁止していると指摘。残虐な刑罰や拷問を禁じている憲法36条にも違反しているとしている。
「絞首刑は瞬間的に意識を失い、死刑囚に苦痛を与えることがない」などとして過去の刑事裁判に提出された法医学者の鑑定書について、原告側はこの見解と異なるオーストラリアの法医学者の証言を挙げ「医学的に誤っている」とも主張している。
日本の死刑制度を巡っては、最高裁が1948年に絞首刑は合憲との判断を示している。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると2020年末現在、日本や米国など55カ国が死刑制度を維持する一方、法律上または事実上廃止している国は144カ国に上っている。
代理人を務める水谷恭史弁護士(大阪弁護士会)は大阪市内で記者会見し、「死刑執行に関する情報が公開されないまま、死刑の存廃を問うのは極めて不合理だ。国は死刑執行の実態を明らかにすべきだ」と語った。
法務省は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。【安元久美子】