海外や日本で過激化する「陰謀論」信者…ドイツで政府転覆計画、日本でも影響広がる

ディープステート(闇の政府)が世界を牛耳っている――。そんな陰謀論を人々が信じるだけではなく、暴力的な行動を起こす事態が世界的に懸念されている。ドイツでは7日、武装組織を結成して政権転覆を狙っていたとして、極右勢力のメンバーらが一斉拘束された。同種の陰謀論が広がる日本でもリスクはあるのか。
背景に米国発「Qアノン」の陰謀論

ドイツ捜査当局などによると、拘束された25人の中には軍や警察の出身者、元連邦議会議員もおり、武器調達や射撃訓練を繰り返していた。連邦議会議事堂の襲撃を計画していた疑いもある。
メンバーらは極右思想を持っていたとみられるが、より過激化させたのは米国発の「Qアノン」と呼ばれる集団の陰謀論だったという。Qアノンは「ディープステートと戦う救世主」としてドナルド・トランプ氏を信奉。2021年1月、「大統領選で不正があった」と信じた人々が暴徒と化し、米連邦議会議事堂を占拠した事件にも信奉者が関与しており、SNSで結束を深めるうちに過激化したと指摘されている。
今回、ドイツで拘束されたメンバーも「攻撃で死者が出るかもしれないが、変革のためには必要だ」と考えていたという。

同種の陰謀論はネットを介して日本にも広がっており、影響された人が過激化する兆候が見られる。
Qアノンの日本支部を自称する「

神真都
(やまと)Q会」は「コロナは存在しない」と主張。メンバーが今年3~4月、ワクチン接種を妨害しようとクリニックなどに侵入して逮捕される事件が起きている。
なぜ陰謀論を信じた人が過激化するのか、どう対処すべきなのか識者に聞いた。
善悪二元論、危うさ…宗教学者・辻隆太朗氏

陰謀論が全て暴力に直結するわけではない。
しかし、陰謀論を信じると「自分たちは正しい」「あいつらは悪」という善悪二元論に陥る。
それが社会への不満や怒りなどと結びつくと、「正義のため」と思い込み、暴力的な行動につながることがある。
日本で過去に起きたテロ事件との共通点もある。オウム真理教の事件だ。彼らは「世界は巨大な勢力に操られている」「自分たちは世界を救うために悪と戦っている」と妄信し、凶行を正当化していた。
最近は、在日コリアンが危険だという妄想から、彼らが通う学校に火を付ける事件も大阪で起きている。組織ではなく、個人が差別的な思想を増幅させて犯行に及ぶようなケースが増える可能性は否定できない。
現在はネットで誰でも陰謀論に触れる環境にあり、影響されやすい。過去の教訓から学び、その特性を知る。不満がある時に善悪二元論に陥ると危うい、という認識が必要だ。

防止策の研究急げ…筑波大教授(臨床心理学)・原田隆之氏

陰謀論は、不確実で不安を喚起させる問題の原因を、根拠もなく特定の集団の責任にする思考だ。対象を「非人間化」「悪魔化」して見る場合があり、それが過激化の要因とみている。
その思い込みが強まると、「打倒しなければならない」という義務感が芽生え、「正義のためには手段を選んではいられない」と考えてしまう。多くの人は暴力に対する抵抗感を持っているが、こうした思考プロセスが抵抗感を弱める働きをすると考えている。
現在はSNSで陰謀論を信じる人たちがつながりやすくなった。日本で「神真都Q会」が賛同者を急速に増やし、接種会場に押し入るような過激な行動を起こすとは、誰も予想できなかったのではないか。SNSは極端な主張が増幅される特性がある。「社会から排除されている」という被害意識を持つ人が増えれば、海外のような事件が起きる可能性はある。
日本では陰謀論と過激化との関係や防止策などの知見はほとんどなく、研究を急がなければならない。