空き缶にたばこの吸い殻、今もリサイクルの大敵…注射針や使用済みマスクも

受動喫煙対策で灰皿が撤去される傍らで、空き缶にたばこの吸い殻を入れて捨てるケースが目立っている。吸い殻などの異物が入ったままでは再利用が難しく、リサイクル施設では一缶ずつ、手作業で取り出す作業を強いられる。子どもが誤飲する恐れもあり、関係者は「缶やペットボトルを灰皿代わりに使わないで」と訴える。(手嶋由梨)
ザルに山盛り

昨年12月中旬、「春日大野城リサイクルプラザ」(福岡県春日市)の工場。ベルトコンベヤーに並んだ作業員たちが、流れてくる空き缶を手にとり、振ったり転がしたりしていた。見た目からは中に異物があるか分からず、音や重さで確かめる。
数本の吸い殻が入った缶もあれば、ぎっしりと隙間なく詰め込まれたものも。飲み口からは取り出せず、金切りばさみで切り開く。作業室に置かれた直径50センチほどのザルは、吸い殻ですぐに山盛りになって異臭を放つ。この日も午前中だけでザルが何度も満杯になった。
工場は、障害者雇用に取り組む「障がい者つくし更生会」(同県大野城市)が、春日大野城衛生施設組合の委託で運営する。大野城市や春日市で回収した不燃ゴミを処理し、缶やビンは1日約10トンを搬入する。
吸い殻などの入った缶は1か月平均で約4700缶に上り、電池やライター、使用済みマスク、インスリン投与の注射針も出るという。電池は火災、注射針は感染のリスクがあり、作業は気を抜けない。異物が入ったままではリサイクルが難しいこともあり、約2年前に手作業で除去を始めた。
男性社員(56)は「安易な気持ちで捨てているのだろうか。処理に手間がかかることを知ってほしい」と話す。
減る灰皿

厚生労働省の2019年の調査では、習慣的に喫煙している人の割合は16・7%で、10年前と比べて6・7ポイント減少した。20年4月には、屋内を原則禁煙とする改正健康増進法が全面施行。駅やコンビニの店頭、公園からも灰皿が次々に姿を消している。

喫煙者や喫煙場所は減っても、空き缶を灰皿代わりにする行為はなくならない。街角から灰皿が減って吸い殻の捨て場がなく、携帯灰皿も持たない人が手近なコーヒーなどの空き缶に捨てていると考えられる。
コロナ禍で、自宅で缶ビールなどを楽しむ「家飲み」が増えたのも無縁ではなさそうだ。コロナの感染拡大が始まった20年のアルコール缶の消費量は、前年比4・1%増の143・8億缶。21年も同1・3%増の145・6億缶に上る。アルミ缶リサイクル協会(東京)の保谷敬三専務理事は「家でたばこを吸いながらお酒を飲み、空いた缶に吸い殻を入れている人もいるのでは」とみる。
同協会によると、21年度のアルミ缶の消費量は33・1万トン。その96%の31・9万トンが再利用される。保谷専務理事は「作業の負担や環境悪化を考え、マナーを守ってゴミに出してもらいたい」としている。
火災や誤飲も

空き缶などに吸い殻を捨てると、思わぬ事故を引き起こす恐れがある。
まず心配なのが火災。空き缶に液体が残っていれば火は消える、と考えがちだ。しかし、缶は中身を取り出しにくいため、吸い殻がたまって乾燥すると、火種となる危険性が指摘される。
子どもが誤飲するケースも後を絶たない。国民生活センターによると、吸い殻を液体に浸すとニコチンが溶け出し、体に吸収されやすくなる。たばこ1本に含まれるニコチンで、

嘔吐
(おうと)の症状を引き起こす恐れがあり、火を使わない「加熱式たばこ」でも同様だ。
同センターは「子どもは中毒症状を悪化させる恐れもある。飲み残しの缶やペットボトルを灰皿代わりに使わないで」と呼びかけている。