学生自治の「聖域」にメス…薬物や性暴力など不祥事続く運動部、大学主導でコンプラ対策

学生アスリートによる不祥事が後を絶たず、大学が対策を本格化させている。大学の運動部は学生自治の観点から「学生主体の運営」が原則だが、薬物や性暴力など教育機関として深刻な事案が多く、大学主導でガバナンス強化に本腰を入れ始めた格好だ。スポーツでブランド力向上を図る大学のイメージダウンに直結することから、不祥事対応の費用を補償する保険制度など新たな仕組みも登場している。(岡田浩幸)

昨年9月にアメリカンフットボール部員4人が準強制性交の罪で起訴された同志社大(京都府)。大学は同10月、全ての体育会系運動部の主将らを対象に緊急研修会を実施した。アメフト部員向けの研修会も3月までの予定で開いており、専門家が米国の大学運動部で行われているコンプライアンス教育の事例などを紹介。アメフト部員(4年)は「意見交換しながら部を再建したい」と話す。
大学運動部の多くは学校法人の組織ではなく、大学公認の体育会などに属する課外活動団体。大半がOB会などの支援を主な財源とするため独立性が強く、大学が運営に関わらない学生自治の「聖域」とされてきた。だが、その伝統が相次ぐ不祥事で揺らいでいる。
同志社大スポーツ支援課の河村秀明課長は「学生だけに押しつけず、大学全体で襟を正す」と力を込める。2020年には近畿大サッカー部、東海大硬式野球部で部員の薬物使用が発覚。コロナ禍で指導者と部員のコミュニケーションが取りにくいことが一因とみられ、両校とも大学主導の研修会を継続して開いている。

相次ぐ不祥事を受け、219校が加盟する体育会系部活動の統括組織「大学スポーツ協会(ユニバス)」は21年5月、原因調査や再発防止体制の整備、記者会見費用など上限300万円を補償する保険制度を創設した。パワハラ相談窓口の設置など13項目の基準を満たし、ユニバスの認証を受ければ保険を利用できる。羽衣国際大(堺市)やIPU・環太平洋大(岡山市)など8校が加入。すでにハラスメント事案で活用されたケースもあるという。
また、ユニバスは昨年5月、加盟校向けにオンラインでのコンプライアンス研修会をスタート。学生アスリートの社会的責任や不祥事がもたらす影響、SNSを使うリスクなどについて弁護士らが解説し、昨年は8回で延べ約1750人が受講。今年も月1回のペースで続ける予定で、担当者は「不祥事対応を誤ると原因究明や再発防止が遅れ、ブランドが傷つく。今後はコンプライアンス対策がより重要になる」と話す。
ユニバスの調査では、運動部員を退学などとした処分事案は過去10年で76件。一方、不祥事の報告義務を部に課している大学は聞き取りに答えた26校中2校にとどまるなど、危機管理体制の不備が目立つ。
米国では「全米大学体育協会(NCAA)」が加盟校と連携し、性的暴力や部内のいじめなどの防止について理解を深める新入生向け講座を開催して啓発に取り組む。米国の大学スポーツ事情に詳しい追手門学院大の吉田良治・客員教授は「部活動はあくまで学生の自主的な課外活動だが、スポーツを広告塔と位置づける大学は少なくない。米国では大学に専門家を置いて人材育成に当たっており、日本でも大学側が積極的に取り組む必要がある」と指摘する。