旧統一教会問題も「なかったこと」に…? 「安倍派」後継争いの有力者・萩生田光一の“ずるい振る舞い”

2016年に大ヒットした映画「シン・ゴジラ」。主役を務めたのは「官房副長官」役の長谷川博己だった。あの映画の衝撃の一つは、映画館を出たら現実の官房副長官は萩生田光一氏だったことである。あれから7年、萩生田先生がまた目が離せない存在となってきた。自民党では政調会長を務め、安倍派の後継争いの有力者としても紙面で見かける。
たとえば田崎史郎氏(政治ジャーナリスト)のコラム(四国新聞1月8日)。「岸田の伴走者は誰か」という内容で、見出しに『軍師・萩生田 信頼厚く』とある。
なぜ「信頼」が厚いのか?
自民党情報に強いというか自民党広報みたいな田崎氏が萩生田氏を絶賛しているのが興味深い。
なぜ萩生田氏は「信頼」が厚いのか? 田崎氏曰く、永田町の流れを読むセンスが優れ、かつ、こうと思ったことを正面切って直言することをいとわないことから、菅義偉氏や岸田氏らに好かれているという。
そんな萩生田氏は衆院解散時期について「今年秋もあり得る」と語ったとかで「衆院解散は早いかもしれない」とコラムは結ばれている。田崎史郎氏、嬉しそう。
公明党から刺された「クギ」
萩生田氏と言えば昨年末のテレビ番組で、増税前に衆院選で国民に信を問う必要があると発言。これには公明党の山口那津男代表が「衆議院の解散は岸田総理大臣が決めることで、専権事項だ。権限のない人が、こういう理由で解散しろとか、ああいう理由だから解散するなといった発言は控えるべきだ」と述べ、クギを刺した(NHK政治マガジン1月11日)。
自民党のやることには見て見ぬふりする公明代表が言うのだからよほどの越権行為に見えたのだろう。そういえば「萩生田」と「公明党」といえば昨年11月にこんなツッコミもあった。
『萩生田も公明党も言えた義理か』(日刊スポーツ「政界地獄耳」2022年11月22日)
何もなかったかのように振る舞う議員たち
この時は「辞任ドミノ」が注目され、寺田稔(前総務相)更迭の頃だ。公明・山口代表は「内閣全体として体制をしっかり立て直して国民の信頼を取り戻す努力が大事だと思う」と苦言を呈し、自民・萩生田政調会長は「政治資金規正法を所管する総務相として、自らの疑惑に対して説明が国民に分かりづらいところがあったと思う」と発言した。
しかし、そもそも旧統一教会問題から始まった閣僚の辞任ドミノなのに、旧統一教会との関連がクローズアップされた萩生田氏や、宗教問題で関連のある公明党がシレっとコメントしている。そんな状況を「萩生田も公明党も言えた義理か」と自民党幹部が言っていたのだ。
問題の当事者が第三者のように外から苦言を呈して見せる。まるでおならをした人がさりげなくその場を離れて「何だか臭いね」ととぼけているようだ。本人は関係ないつもりでもおならの臭いは簡単に体から離れない。周囲はわかっているし忘れるわけがない。萩生田氏の旧統一教会問題での「何もなかったかのような振る舞い」はそんな状況に似ている。
山上被告へ「甘ったれるな」
それで言うと先週はもう一人、何もなかったかのような人がいた。
『旧統一教会の支援受けた自民・井上氏 山上容疑者へ「甘ったれるな」』(朝日新聞デジタル1月11日 )
井上義行参院議員へのインタビューである。井上氏は安倍氏の元側近であり、昨年の参院選では安倍氏が教団票の支援を井上氏に割り振ったとされる。実際に教団の関係団体のイベントで井上氏が「投票用紙2枚目は~?」と呼びかけると参加者が「井上義行~!」と答えるゴキゲンな映像が報道で繰り返し流された。
そんな井上氏がインタビューに答えているのだが、まず安倍氏が統一教会と近かったと報道されることに憤っていた。《別の勢力によるテロの可能性だって十分にあり得るはずです》とも言っている。事件後に何が問題となり注目されているのかわかっていない様子なのだ。
山上被告に対しては《私は大根1本で1週間暮らしてきた経験があります。40歳にもなって、親の財産のことで苦しむなんて、甘ったれるなと思います》。教団から厚い支持を受けていた井上氏が言っている。違和感しかない。さらに言えば安倍元首相に世話になった人が事件の解明から目を背けているのも違和感がある。インタビューはいろいろ浮かび上がらせてくれた。
「萩生田」「井上」に覚えた既視感の正体は…
萩生田氏も井上氏も、なぜ何もなかったかのような振る舞いができるのだろう。そういえば「萩生田」「井上」という名前のこの並びには既視感がある。どこかで見たような……。
そうだ、加計学園問題である。あの問題の渦中、萩生田氏はかつて落選中に加計学園が運営する千葉科学大の客員教授として報酬を得ていたことも注目された。実はそれは井上義行氏も同じだった。
「井上さんも萩生田さんも、安倍枠で千葉科学大に入ったはずです。安倍さん自身が『萩生田は浪人(落選)して金が大変なので、加計に面倒見てもらうよう俺が頼んだんだ』と言っていました」と千葉科学大学の元教員が証言していた(『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』森功 著、文藝春秋)。
言いなおせば、
「井上にしろ、萩生田にしろ、千葉科学大危機管理学部の客員教授として報酬を得てきたのは紛れもない事実だ。つまり安倍が用意した側近たちへの救いの手が、盟友の経営する大学の客員教授ポストだったということだろう」(同書より)
ここでいう盟友とは加計孝太郎氏のことである。加計学園問題でも旧統一教会問題でも共通して出てくる「萩生田」「井上」という名前。うっかり感心してしまうが、萩生田氏と井上氏は何もなかったかのように加計学園問題でも旧統一教会問題でも振る舞う。「危機管理学部の客員教授」で教えていたことってそういうこと? 一度講義を受けてみたかった。
(プチ鹿島)