自民党の甘利明前幹事長が少子化対策の財源として「消費税増税も検討対象」と発言し、また麻生太郎副総裁は「防衛増税は国民の理解を得た」と講演で言い切った。コロナ禍で冷え込んだ経済がまだ十分に回復していない中での自民党の大物たちの発言は、国民感情を逆なでした。
そもそも岸田文雄首相が防衛増税をこのタイミングで打ち出したことが問題だ。物価上昇などで生活が苦しくなっているタイミングで、増税を政治のメインテーマにするのは、あまりにも下策である。
春闘で賃上げの機運が高まっているところに、「将来、増税しますよ」という政府のメッセージはあきれるレベルだ。また岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」からいっても、法人税を引き上げれば株価に悪影響が出る。その一方で「貯蓄するよりも株に投資を」と国民に呼びかけるのだから意味がわからない。
もちろん消費増税など、日本経済をわざわざ低迷させるためにやるとしか思えないものだ。「消費増税はしない」と政府は火消しに一生懸命だ。だが、国民は財務省に洗脳されている岸田政権ならば、いずれやるだろうと予想している。
どう考えても今は増税ではなく、減税のタイミングだ。コロナ禍で打撃を受けた観光や飲食業、そして地方経済や低所得者の生活を立て直すには、消費減税が最も有効だが岸田政権は一切の減税を拒否している。財務省がその方針だからだろう。ひょっとしたら岸田首相は、「岸田文雄財務事務次官」の方がお似合いかもしれない。
中国など周辺国との軍事的緊張が高まる中で、防衛費の拡充は必要だ。「異次元の少子化対策」も優先課題で間違いない。だが、その財源は、まずは経済成長による税収増で行うべきだ。そのためには減税など機動的な財政政策、そしてインフレ目標達成に強くこだわる金融緩和政策を採用することだ。
後者については、日本銀行の新総裁人事が非常に心配である。ダメな総裁を選んで、さらに政府と日銀の共同声明を安易に行えば、日本経済は致命傷を負うだろう。
政府の無駄をなくす行政改革も財源捻出の手段としてありだ。菅義偉前首相が、最近この点を指摘し、岸田首相の方針を、かなりはっきり批判したのは注目すべき動きだ。日本の財政運営をおかしくしている「国債償還60年ルール」見直しの動きも与党内にある。与野党ともに積極的に、経済を立て直す政策を競うべきだ。そうしないと〝財務省政権〟に日本が喰(く)われてしまうだろう。 (上武大学教授・田中秀臣)