防衛費増額による真の代償が「増税」ではない理由 「今を生きる世代」が分かち合うべき負担の正体

1月上旬に実施されたJNN世論調査によれば、来年度から5年間の防衛費を43兆円に増額する政府方針については、「賛成」が39%、「反対」が48%であり、防衛費増額の財源として、2027年度には1兆円あまりを増税で確保するという方針については「賛成」が22%、「反対」が71%となった。
有識者「防衛費の財源は増税で確保する」
だが、政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(以下「有識者会議」)は、その報告書の中で、次のように述べている。
防衛力の抜本的強化に当たっては、自らの国は自ら守るとの国民全体の当事者意識を多くの国民に共有していただくことが大切である。そのうえで、将来にわたって継続して安定して取り組む必要がある以上、安定した財源の確保が基本である。これらの観点からは、防衛力の抜本的強化の財源は、今を生きる世代全体で分かち合っていくべきである。
これを、もっと率直な表現で言い換えれば、次のようになる。 ① 防衛力の強化に必要な財源を確保するためには、増税が必要である ② 国債の発行による財源確保は、将来の世代に増税という負担をかけるので、今を生きる世代に増税の負担を課すべきである ③ 国民全体が自らの国は自ら守るという当事者意識をもち、増税を受け入れるべきである
しかし、世論調査は、国民のおよそ7割がその増税に反対していることを示している。それは、約7割の国民が、自らの国は自ら守るという当事者意識を欠いているということを意味するのだろうか? あるいは、「今を生きる世代」は防衛力の強化の負担を将来世代へと先送りしようとしているのだろうか?
検討してみよう。
有識者たちの「根本的誤解」
まず指摘しなければならないのは、「有識者会議」の論理の大前提となっている「①防衛力の強化に必要な財源を確保するためには、増税が必要である」が間違っているということである。
資本主義における政府は、その支出の財源を確保するために徴税を必要とはしないことは、すでに論じたので参照されたいが、改めて結論をまとめるならば、こうなる。
資本主義においては、政府の需要に対して、中央銀行が貸し出しを行うことで、貨幣が無から創造される。言い換えれば、政府が債務を負い、支出を行うことで、貨幣が供給されるのが、資本主義における国家財政の仕組みである。
要するに、貨幣(財源)を生み出すのは、政府(と中央銀行)である。したがって、政府は、支出にあたって、税収という財源を必要としない。