東京・中野の強盗容疑者が事件後、フィリピンに出国 強奪金を運搬か

全国で相次ぐ強盗事件で、昨年12月に東京都中野区で起きた強盗傷害事件に関与した疑いで今月1日に警視庁に逮捕された大阪市の職業不詳、西本佑聖容疑者(22)が、事件後にフィリピンへ出国していたことが捜査関係者への取材で判明した。フィリピンでは、一連の強盗事件で「ルフィ」と名乗る指示役の可能性がある日本人4人が入管施設に収容されている。警視庁は西本容疑者が強奪した現金をフィリピンに運んだ可能性もあるとみて渡航目的などを調べている。
捜査関係者によると、西本容疑者は中野区の事件の約1カ月後の今年1月上旬にフィリピンに渡航。今月1日に日本に帰国したところを成田空港で強盗傷害容疑などで逮捕された。
中野区の事件では現金約3000万円が奪われ、現場付近に落ちていた約1000万円を除く約2000万円の行方が分からなくなっている。警視庁暴力団対策課は、西本容疑者が奪い取った現金をフィリピンに運んだ可能性もあるとみている。
「ルフィ」の可能性があるとされる日本人4人は、フィリピンを拠点とした特殊詐欺事件に関与した疑いがあるとして、警視庁が窃盗容疑などで逮捕状を取っている。この詐欺グループのリーダーとされる渡辺優樹容疑者(38)はかつて、交際していた女性(32)を「運び屋」に仕立て、詐取金を日本からフィリピンに運搬させていたことが分かっている。
裁判記録や捜査関係者によると、この女性は2019年3月に首都マニラで渡辺容疑者と出会い、交際を始めた。翌4月に再びマニラを訪れた際、日本から持ち出した現金2000万円を渡辺容疑者に渡していた。女性は自身が逮捕されるまでに計7回フィリピンに渡航していたという。
交際をきっかけに、女性は渡辺容疑者の詐欺グループ内でメンバーのリクルート役のほか、詐取金の回収役や運搬役などを担い、グループの「要職」を務めるようになったとみられる。
ネット交流サービス(SNS)などを通じ、高齢者らから現金やカードをだまし取る「受け子」や「出し子」を勧誘。秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で「タナカ」という偽名を使って他のメンバーと連絡を取り合い、犯行方法を指示したり、現金を回収したりしていた。
渡辺容疑者との交際開始から約8カ月後の19年11月、高齢者からキャッシュカードを盗んだとして大阪府警などは窃盗容疑で女性を逮捕。20年10月、懲役4年6月の実刑判決を言い渡された。判決は詐取金の回収役だったことなどを認定し、「グループが犯罪収益を確実に回収することに貢献し、ピンポイントだが重要な役割を果たした」と指摘した。
警察庁によると、渡辺容疑者をリーダーとするグループによる特殊詐欺被害は全国で計60億円以上に上るとみられ、これまでに約70人が検挙されている。
このグループによる被害は遅くとも18年11月から確認されており、渡辺容疑者はフィリピンから遠隔で特殊詐欺を指示していたほか、交際女性などを使って詐取金を現地に運搬させていたとみられる。
警視庁は、渡辺容疑者が関与したとされる特殊詐欺事件の手口が、一連の強盗事件の手口と似ていることなどから、関連を調べている。【林田奈々、遠藤龍】