キリスト教系の宗教団体「エホバの証人」に関する宗教2世問題。信者への虐待が疑われる事例が報告されていると弁護士らが訴えました。 2月28日午後、東京都内で記者会見を開いた「エホバの証人問題支援弁護団」。元信者などの支援を行うために設立され、2月27日、教団で虐待が疑われる事例が報告されていると厚生労働省に通報しました。 (エホバの証人問題支援弁護団 田中広太郎弁護士) 「エホバの証人に関わる議論されている問題は、非常に長い間社会に隠されてきた問題でありますし、ある意味、社会に見過ごされてきた問題でございます。それを多くの方が見て聞いてくださることが、非常に多くの人の様々な問題を救うことになると確信しております」 弁護団はエホバの証人に対して大きく3つの問題を指摘しています。 1つ目の問題は『ムチ打ち』。信者の子どもをムチでうつ“懲らしめ”です。教団のホームページには、聖書の教えとして「ムチを控える人は子どもを憎んでいる」などと記されていますが、エホバの証人の2世信者はこう訴えます。 (エホバの証人2世 団作さん※仮名 去年12月) 「小学生の時は身体的虐待と隣り合わせの日々です。(集会で)ちょっとでも居眠りをすれば帰ってムチですよ。体中、ぶったたかれます。電気コードでぶったたかれます」 弁護団によりますと、今も教団でムチが使われているかは不明としつつも、極めて長期間続いていたことがわかっています。 2つ目の問題は『輸血拒否』です。大きな文字で「輸血しないでください」と書かれた書面。信者はこれに署名して常に持ち歩くことを求められるといいます。JNNの取材に答えた30代の2世信者は、10代の頃、手術が必要だった時、信者である母親が輸血を拒否したと話します。 (エホバの証人2世・30代) 「輸血しないとうちの病院では手術はできないよと言われたことがあって。輸血しなくても(手術が)できる病院を探したんですけど、自分が死ぬんだっていうことがすごく怖かったです、当時」 輸血拒否をめぐっては、1985年、神奈川県で当時小学5年の男の子が車にはねられた際に、エホバの証人の信者だった両親が輸血を拒否して、その後死亡する事案も起きました。 教団側は「聖書は血を避けるよう命じている」としていますが、去年12月に厚労省が策定したガイドラインには「医師が必要と判断する医療行為(輸血など)を受けせさせないことはネグレクトに該当する」と明記されていて、弁護団はこれが今も続いているとして問題提起しています。 3つ目の問題は『忌避』。教団を脱会した場合、家族であろうと信者と一切の交流・接触を禁止されていて、多くの元信者が苦しめられたといいます。 弁護団の発起人である田中広太郎弁護士も、実はエホバの証人の元2世信者です。 (エホバの証人問題支援弁護団 田中広太郎弁護士) 「母親が私が1歳の時にエホバの証人と関わりを持つようになりましたので、1歳の時からいて、13歳の時に洗礼を受けて、25歳くらいの時に活動は辞めました。自分自身の人間性を確立したタイミングで離れた。エホバの証人の使う用語の意味とか概念を体感として理解している人は非常に少ないと思います。ですので、それを理解している者として、そして曲がりなりにも専門職である者として、誰かが説明したり誰かが代弁したりするのであれば、そこに参加するべきであろうと強く思った次第でございます」 田中弁護士によりますと、現時点で全国から100件以上の相談が寄せられているということです。今後については次のように述べました。 (エホバの証人問題支援弁護団 田中広太郎弁護士) 「私どもとしては、まずは皆さんが抱えていらっしゃる悩みや問題について恐れることなく誰かに言うことができる状況、それを社会的に吸い上げて検討したり分析したりして公表する。こういった受け皿が今までなかったので、ある意味社会から見捨てられて苦しんできたと思いますので、そこの障壁を突破することが最も重要なことだと思っています」