奈良県知事選(4月9日投開票)をめぐり、自民県連会長の高市早苗・経済安保担当相(衆院奈良2区)が窮地に立たされている。自ら擁立した新人候補と現職の自民公認争いが激化、一本化に失敗すれば、日本維新の会が推す新人候補に知事の座を奪われかねない状況だからだ。
高市氏は、安倍晋三元首相の寵愛を受けて初の女性首相候補と目されている「保守派のマドンナ」。それだけに地元知事選で党内調整に失敗し、維新知事の誕生に手を貸す結果となれば、党内で「首相候補失格」の声が広がることは間違いない。
自民分裂による三つどもえの構図
奈良県知事選は統一地方選前半戦の一環として、3月23日告示・4月9日投開票の日程で実施される。これまで、5選をめざす現職の荒井正吾氏(78)氏、元総務省財務調査課長の平木省氏(48)、元同県生駒市長の山下真氏(54)の3人が出馬表明している。
3氏のこれまでの対応を振り返ると、まず平木氏が昨年末に無所属での立候補を表明。同氏は高市氏の総務相時代の秘書官で、高市氏が擁立を主導した。
これに対し、5期目を目指す荒井知事も1月4日に無所属での立候補を表明して自民に推薦依頼。その一方で日本維新の会が1月21日に地元組織が山下氏擁立の方針を決定したことで、「自民分裂による三つどもえの構図」(自民党本部選対)となった。
もともと、自民県連は前回の選挙まで荒井氏を推薦してきたが、「高齢と多選反対」を理由に、今回は平木氏に乗り換えた。県連幹部は「党本部が多選はだめだというので、高市氏が平木氏を連れてきた。県連内部でも若くてフレッシュな候補でなければ維新に勝てないとの意見が圧倒的だった」と経緯を説明。最終的に県連から一任された高市氏が平木氏推薦を決めた。
これに対し荒井氏は、県連決定を受けて報道陣に、「自民の推薦がなくても立候補する」と断言。1月27日に奈良市内のホテルで開催した、事実上の決起大会ともなる政治資金パーティーには、奈良市長をはじめ複数の自民系の首長、県議らが参加、荒井氏は「奈良の発展のために今後もお役に立ちたい」と訴えた。
古賀氏の腹心で二階氏とも親しい現職の荒井氏
荒井氏は運輸省(現・国土交通省)のキャリア官僚から参院選奈良選挙区に出馬して初当選、参院1期目の最後に知事に転身した人物。参院時代は宏池会(現岸田派)に所属したことで古賀誠元幹事長の腹心となり、「運輸省のドン」と呼ばれた二階俊博元幹事長ともきわめて親しい関係だ。