多くが〝作成者不明〟放送法文書の疑念深まる 「総務省はあまりにもいい加減」「資料を見て『高市氏が狙われた』という印象」石井孝明氏

総務省は10日、放送法の「政治的公平」に関する行政文書について、調査(精査)状況を発表した。総務省関係者など十数人に聞き取りをしたところ、文書を構成する全48ファイルのうち、26ファイルは現時点で作成者が確認できなかった。当時の安倍晋三首相と高市早苗総務相(現・経済安全保障担当相)の電話会談に関する文書は、作成者も作成経緯も不明だという。総務省は大丈夫なのか。

「総務省の公表資料を見てあぜんとした。あまりにもいい加減だ。行政文書は大して意味がないと思っていたが、今回の資料を見て、『高市氏が狙われた』という印象を受けた。高市氏は行政文書に書かれた大臣レクの存在も否定し、総務省も明確な返事をしていない。捏造の疑いもある。これが個人情報が集約したマイナンバーカードを所管する役所なのか。行政機関の信頼に関わる」
ジャーナリストの石井孝明氏はこう語った。
注目の行政文書は78ページ。立憲民主党の小西洋之参院議員が総務省職員から受け取ったとして2日に公表した。安倍政権当時の2014~15年、官邸側と総務省が放送法をめぐって協議した経緯とされる。
総務省は、行政文書78ページを全48ファイルに整理して調査した。そのうち26ファイルは10日時点で作成者が確認できていないと説明した。何と、26ファイルは78ページ中50ページを占める。
特に、一部野党が高市氏に「大臣辞任・議員辞職」を迫る根拠の一つとした、2015年3月9日と記載された「高市大臣と総理の電話会談の結果」という文書は、作成者だけでなく、作成の経緯が不明だとした。
当時の礒崎陽輔首相補佐官から政治的公平に関する問い合わせがあったことは確認したが、総務省は「強要があったとの認識は示されなかった」と説明した。
総務省は、高市氏や安倍氏に関する資料は精査を継続するというが、「取扱厳重注意」などの記載があった行政文書が外部に「提供・流出」した経緯も調べるべきだ。国家公務員法では、《職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない》(100条)との規定がある。
前出の石井氏は「一部野党は『放送法の解釈を変更した』などと騒いでいるが、行政が解釈を修正するのは当たり前ではないか。それよりも、行政文書が流出した国家公務員法違反疑惑について調査すべきだ。(作成者も作成経緯も不明の行政文書が外部に出るなど)政治的意図を感じる。総務省が調査できないなら、刑事告発を受けて捜査機関が入るべきだろう」と語っている。