和歌山市で2021年6月、当時16歳だった鶴崎心桜(こころ)さんが虐待による衰弱で死亡した事件で、和歌山県の検証委員会が29日、報告書を公表した。不登校だった心桜さんとほとんど対面できていなかったことを中学校内で情報共有できておらず、関係機関の対応の不十分さを指摘した。
検証委は弁護士や大学の教授らで構成。報告書によると、心桜さんは中学2年から学校を休みがちになり、3年時の出席日数は0日だった。住居も把握できず、メールのやり取りのみで、最後に担任が心桜さんを目にしたのは3年時の20年10月だった。
問題を担任のみで対応し、学校内で情報共有していなかった。欠席がちな生徒について話し合う「校内ケース会議」も開かれていなかった。また、1年時に「体にあざのようなものがある」との情報があったが、担任や養護教諭のみの確認で済ませていた。
委員長を務めた和歌山信愛大の桑原義登教授は「不登校の理由の掘り下げが不十分だった」と話し、行政の福祉部門やスクールカウンセラーとの連携の不十分さを指摘した。
事件を巡っては、和歌山地裁が3月15日、妻である心桜さんの母(当時37歳、事件後に死亡)と共に暴力を振るうなど虐待を加えて衰弱死させたとして、保護責任者遺棄致死罪に問われた同居人の男性被告に懲役6年の判決を言い渡している。【山口智】