衆参補選(23日投開票)は自民党の4勝1敗となった。中でも注目は、凶弾に倒れた安倍晋三元首相の後継が出馬した山口4区。安倍昭恵夫人の奮闘に対して、ジャーナリストの有田芳生氏が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を引っ提げて挑戦。炎上騒動まで起き、芸能界にも飛び火した。本当の勝利者は誰だったのか。
山口4区には下関市議だった吉田真次氏が安倍氏の後を継ぐ形で出馬。昭恵夫人が全力サポートしたおかげか、午後8時ちょうどに当選確実となり、事務所は安堵に包まれた。
昭恵夫人は「これからも私は下関市民でもあるので後援者の一人として吉田氏を見守りたい。何かあれば主人からきっとメッセージが来るかもしれないので、お伝えできればいい」と吉田氏を支え続けるとした。
当選したものの吉田氏に笑顔はない。弔い選挙ということもあるが、それだけではない。衆院選の10増10減の影響で山口県は選挙区が減ることになっている。山口4区は新山口3区となり、なくなってしまうのだ。
永田町関係者は「林芳正外相と吉田氏が新3区のイスを争うことになりますが、吉田氏がその土俵に乗るには今回の選挙で圧勝する必要がありました」と指摘。結果は約5万票で圧勝とはならなかった。
一方で晴れやかな表情なのは、敗れた有田氏だ。同区は有田氏が長年取り組んできた旧統一教会の問題を訴えるのに最適な選挙区でもあった。安倍氏は旧統一教会と密接な関係にあるとされていたからだ。
その戦略は的中した。選挙戦の中で有田氏が「下関ってのは統一教会の聖地なんです」と発言したことがテレビ報道などを通じて拡散。実際は旧統一教会関係者が「山口の下関は聖地と同等の場所です」と話していたことなどから、有田氏の聖地発言となっていたわけだが、ネット上で賛否が寄せられ炎上したのだ。
この聖地騒動には田村淳ら有名人も参入。中でもタレントの国生さゆりのツイートが話題となった。国生は「根拠なくヨシフさん『聖地』とか言っちゃった訳だし、軽蔑するよ」と有田氏を批判した。続けて「選挙中なんのに軽率過ぎる。そんな事も考えられないほど、お花畑なのかな」と一刀両断したのだ。
選挙後、有田氏は取材に「結果的に炎上したことで(旧統一教会が)下関に浸食しているという認識が広がったのではないか。自民党との癒着の原点が分かったと思います」と、旧統一教会に対する問題意識を全国に広めることができたと前向きに振り返った。