知床観光船事故 国交省、家族説明会を4月で打ち切り

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故を受け、国が乗客の家族らを対象に原則、週2回実施していたオンライン説明会を4月限りで打ち切ったことが、国土交通省などへの取材で明らかになった。国交省は今後、問い合わせがあれば個別に説明するとしているが、家族からは「個別対応では国のペースで話が進み、家族の横のつながりも途切れてしまう」といった不満の声も上がっている。
2022年4月23日に発生した事故では、乗客乗員26人のうち20人の死亡が確認された一方、6人が行方不明となっている。説明会は事故直後に始まり、同年6月から原則週2回、オンラインで開かれている。国の関係機関が、捜索状況や事故原因の究明状況などを報告したり、家族の質問に答えたりしてきた。数時間に及ぶ説明会もあった。
国交省によると、4月下旬、定例説明会を打ち切って、個別の説明に移行すると家族らに伝えた。捜索に進展などがあった場合は、全体説明会を開くとしている。2月上旬、乗客の家族らに対し、定例説明会などについてのアンケートを実施したところ「頻度を減らしてもいい」などの意見があったという。
ただ、定例開催の打ち切りを望む声が多かったわけではないとし、国交省の担当者は取材に対し「事故から1年が過ぎて、ご家族の関心事項は個別化しており、全体に伝える内容も減っている」と説明した。
「いきなり、ひどい」
一方、ある乗客の家族は「説明会があったことで家族間で連携したり、情報や問題意識の共有ができたりした。段階的に回数を減らすわけでもなく、いきなりの打ち切りはひどい」と批判。別の家族は「事故の風化を懸念している」と話し、説明会の打ち切りにより「事故が過去のものになりそうで不安だ。自分だけがあの日に取り残されている気持ちになる」と語った。
乗客家族らの有志は、現在、定例説明会の打ち切りについての意見をまとめており、今後、国に提出するという。【山田豊】