自民党の一部に殺傷能力を持つ兵器をウクライナに送ろうとする動きがあるようだ。
自民党と公明党は、4月25日に国会内で他国への防衛装備の供与拡大に関する協議会の初会合を行った。
<自民党の小野寺五典安全保障調査会長は会合で「具体的な方向性を出せるようにしたい」と呼びかけた。公明党の佐藤茂樹外交安保調査会長は「平和国家としての歩みを堅持し、三原則を維持しながら望ましい制度を議論したい」と語った>(4月25日「日本経済新聞」電子版)。
日本の防衛産業は、武器の売り先が自衛隊、海上保安庁、警察に限られる。これでは経済効率性が悪い。さらに東南アジア諸国では中国が積極的に武器を売っている。
武器を売ればメインテナンスが伴うので、この状況が続けば東南アジア諸国における中国の影響が強まる。それに対抗するため、戦争を抑止する目的で東南アジア諸国への武器輸出ならば検討する意味があると思う。その場合もすでに戦争が起きている国には武器を送るべきでない。日本が事実上の交戦国とされるリスクがあるからだ。
ウクライナでは現実に戦争が起きている。にもかかわらず、こんな議論が起きている。
<ロシアが侵攻を続けるウクライナへの殺傷能力のある装備品の供与も論点だ。/いまの制度は紛争当事国への輸出を一律に禁じており、ウクライナも例外ではない。国際法に違反する侵攻を受けた国への輸出容認論やウクライナに絞った解禁論が自民党内で持ち上がる>(前掲、「日本経済新聞)。
筆者のところにはロシアの信頼できる筋から、日本がウクライナに殺傷能力を持つ兵器を供与すれば、日ロ関係の基盤が根本から崩れるというメッセージが入ってきた。サハリンの天然ガス、石油の日本への輸出を停止し、ロシア産海産物の禁輸、ロシア上空を日本の航空機通行を認めない、法規を特に厳格に解釈して、日本漁船を拿捕する、モスクワの日本人記者を取材活動をスパイ行為として摘発するなどが考えられる。
自民党の勇ましい人たちはこういうリスクを考慮に入れているのだろうか。むしろ日本はG7で唯一、殺傷兵器をウクライナに供与していないという事実が将来のウクライナ停戦交渉において日本が仲介国となるための重要な要因となる。この可能性を活かした方が日本の国益に貢献すると思う。
もっとも公明党の山口那津男代表は、<「殺傷能力を持つ兵器を解禁する一般化した議論にすべきではない」と言及した>(4月4日「日本経済新聞」電子版)。
公明党の頑張りに期待する。