戴冠式で皇嗣秋篠宮さまが担われる役割 「新たなご自覚や交流に」

チャールズ英国王の戴冠(たいかん)式参列のため、秋篠宮ご夫妻は4日から英国を訪問される。海外王室の戴冠式や即位式には戦後、主に歴代皇太子が参列しており、今回の戴冠式に皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)である秋篠宮さまが参列されるのは、こうした前例に倣う形となる。秋篠宮さまはこれまで海外王室の葬儀などにたびたび参列しているが、天皇陛下が差し向ける「ご差遣(さけん)」で戴冠式に臨まれるのは初めて。専門家は「陛下を支える皇嗣として、新たなお立場やご自覚での国際交流の機会になる」とみる。(緒方優子)
上皇さま契機に
前回1953(昭和28)年のエリザベス女王の戴冠式には、当時皇太子だった上皇さまが昭和天皇の名代として参列された。戦後史が専門の成城大非常勤講師・舟橋正真氏は当時の状況について、「天皇の外国訪問は想定されておらず、国事行為の臨時代行に関する法律もまだなかった」と指摘。その上で「戦後の反日感情が残る中で、新たな時代の象徴として若い皇太子を派遣し、同世代の王族との交友を図るとともに、次の皇位継承者として教育する意味合いがあった」と話す。
この歴史的なご訪問が契機となり、天皇の外国訪問が可能となった後も、戴冠式には皇太子が参列することが「通例化した」(舟橋氏)。平成においては、皇太子時代の陛下がその役割を担われてきた。
変わる意味合い
戴冠式や即位式への皇太子など「ナンバー2」の参列は、国際的な慣例でもある。国際儀礼では在任期間の長さが重視され、新たに即位した国王の戴冠式に、より在任期間の長い他国の元首が皇太子を代理として差し向けても、失礼には当たらない。実際、上皇さまと陛下の「即位の礼」には、いずれも当時皇太子だったチャールズ国王が参列した。
英国王室に詳しい関東学院大の君塚直隆教授は「戴冠式や即位式は次世代を担う者同士が、将来につながる人脈を築く機会になる。チャールズ国王も、皇太子時代に日本と緊密な関係を築いてきた」と解説する。
一方、今回の戴冠式については「必ずしも『次世代』の交流の場とは言い難い」と指摘。チャールズ国王は現在74歳で、25歳で即位したエリザベス女王の時と異なり、式の参列予定者には年配者も名を連ねる。君塚氏は「国王がこれまで築いた人脈や各国との関係を確認するような意味合いが大きいのでは」と話す。
公式ご訪問見据え
今回の「ご差遣」には、もう一つの背景がある。天皇、皇后両陛下はエリザベス女王の生前、英国から国賓として招待を受けられていたが、新型コロナウイルス禍で訪問が実現しないまま昨年9月に女王が死去。両陛下は「異例」とも言える短期間の調整で英国を訪問し、国葬に参列された。
延期された両陛下の国賓としてのご訪問については英国との間で調整が続いており、宮内庁は「できるだけ早期に実現したい」と説明。戴冠式に両陛下が参列されれば「短期間に3回、同じ国を訪問することになり、公平性を欠く」(宮内庁幹部)との見方もある。
こうした中、宮内庁などは両陛下のお考えも踏まえて「ご差遣」を決定したという。名古屋大大学院の河西秀哉准教授(日本近現代史)は、「戴冠式は英国だけでなく各国の王族が一堂に会する。秋篠宮さまが、天皇が差し向けた『皇嗣』として臨まれることで、新たなご自覚や交流が生まれる可能性もある」と期待する。