遊説中の要人警護 厳重化定着するか

昨年の参院選で安倍晋三元首相が銃撃され、その9カ月後の衆院補選で岸田文雄首相の近くに爆発物が投げ込まれる事件が発生し、地方の遊説先で要人が襲撃される事件が相次いだ。警察当局は首相襲撃事件当時の警護警備の状況について検証作業を進めている。政党側も選挙遊説の対策を強化しており、次の大型選挙でも要人警護は厳重化される見通しだが、有権者との触れ合いを重視する日本の選挙で、今後も定着していくかが課題だ。
昨年7月の安倍元首相の銃撃事件を機に警護要則が見直され、警察庁が都道府県警の警護計画を事前に審査し、実施後にも状況を確認して報告するよう定めた。先月15日の和歌山市の漁港での首相の演説も警察庁の審査を経ていた。
検証作業については、首相を退避させた警護員の対応、聴衆の避難誘導、演説会の主催者である政党側との事前調整がポイントになりそうだ。警察幹部は「(容疑者を)会場に入れ、爆発物の投げ込みを許したという点については特に確認が必要だ」と指摘する。
事件を受け、政党側も対策を強化。事件後の選挙遊説で自民党は首相や党幹部らが街頭に立つ場合は防弾スクリーンを取り付けた街宣車の上で行うことを原則とした。聴衆との距離は20メートル以上を確保し、金属探知機による手荷物検査も積極的に実施。野党も街宣車の前に立つなどの対応を取ったほか、聴衆と一定の距離をとったり、演説する幹部になるべくスタッフを付けたりした。
選挙遊説時の要人の警護態勢は厳重化される見通しだが、有権者との触れ合いを重視したい政治家側の声は根強く、別の警察幹部は「選挙警護の厳重化が今後も定着するかどうか正念場だ」と話した。(大渡美咲)