身代金ウイルスで米当局に訴追のロシア人 カプコンへの攻撃関与か

身代金要求型のコンピューターウイルス「ランサムウエア」を使ってサイバー攻撃をしたなどとして米司法省が16日に訴追を発表したロシア人男性(30)=ロシア在住=が関与したとみられる事件を巡り、警察庁サイバー特別捜査隊などが日本国内の捜査で得た情報を米連邦捜査局(FBI)に提供していたことが判明した。警察庁が17日、明らかにした。
関係者によると、2020年にゲーム大手「カプコン」(大阪市)が被害に遭ったサイバー攻撃の捜査情報が含まれるという。日本の警察当局は、国内の被害でも、このロシア人男性が攻撃した可能性があるとみて捜査を続ける。男性は20~22年、米国の法執行機関や医療機関などを攻撃したなどとして訴追された。
カプコンを巡っては、20年10~11月に北米にある現地法人がサイバー攻撃を受けるなどしてランサムウエアに感染したことが明らかになっている。この攻撃で、最大約39万人の個人情報や内部情報などが流出した可能性があるとされる。ランサムウエアは、企業などに保存されているデータを暗号化して利用できない状態にした上で、復元の対価として金銭の支払いを要求するものだが、カプコンは攻撃者と交渉しなかった。
当初は大阪府警だけだった捜査に、警察庁直轄のサイバー特別捜査隊が22年5月に加わったところ、警視庁が捜査していた別のランサムウエア事件との関連が浮上。東京の民間企業1社が被害に遭ったものと合わせた2件の攻撃の経路などの情報をFBIに提供したという。
サイバー特別捜査隊は、海外にまたがるサイバー事案への対処能力を向上させるため、22年4月に発足した。この隊が海外の捜査機関と連携した事件で、攻撃者が訴追されるのは初めて。警察庁は「引き続き、国際捜査共助を推進する」としている。【松本惇】