東京・銀座の高級腕時計店で起きた強盗事件に関与したとして、警視庁少年事件課は18日、事件直後に都内マンションに逃げ込んだとする住居侵入容疑などで逮捕していた横浜市在住で16~19歳の高校生や無職の男性4人を強盗容疑などで再逮捕した。4人のうち少なくとも3人は以前からの知り合いだったとみられる。いずれも否認または黙秘しているという。
逮捕容疑は8日夕、銀座の高級時計店「クォーク銀座888店」に押し入り、男性店員に刃物を突きつけ「伏せろ、殺すぞ」などと脅し、バールのようなものでショーケースをたたき割って腕時計など74点(販売価格約3億856万円相当)を奪ったとしている。
少年事件課によると、奪われた腕時計などはその後、逃走に使われたとみられるワゴン車の中や、4人が逃げ込んだとされるマンション近くで袋に詰められた状態で見つかり、全て回収された。車やその周辺からは他にも刃物やバール、仮面などが見つかったという。
強盗事件は繁華街で発生し、多くの目撃者が撮影した動画がネット交流サービス(SNS)などで拡散された。出勤途中、現場に居合わせたバーオーナーの40代女性が18日に毎日新聞の取材に応じ、当時の様子を振り返った。
居合わせた女性「映画の撮影かと」
事件当日、女性がまず目にしたのは、仮面姿の3人が激しくショーケースをたたき割る姿だった。当初は「映画の撮影かと思った」が、すぐに強盗と気づいて警察に通報した。「まだいける」と叫ぶ声が聞こえ、「犯人は若い子かな」と思ったという。
店の入り口では、見張り役とみられる1人がしきりに外を気にしていた。距離は1~2メートルしか離れていないと感じたが、女性は逃走を遅らせようと思わず店のドアを閉めた。見張り役が再びドアを開けて足で押さえると、女性も負けじともう一度ドアを閉めた。
「殺すぞ」。見張り役はドアを押さえる女性を怒鳴りつけ、女性が身を引いたと同時に仮面姿の3人が店から飛び出してきた。3人は店の前にあったワゴン車に乗り込み逃走した。車内ではもう1人が待機していたとみられ、車はすぐに現場から走り去った。
女性の行動はSNSで話題となった。「あまり怖さを感じなかったが、SNSでは私の取った行動に対して『危険だ』というコメントもあった。今考えると確かにそうだったかもしれないが、体が反射的に動いていた」と、女性は当時を振り返る。逮捕された少年らについては「あまりに大胆で、すぐに捕まるに決まっているのに、なんでこんなことをしたのだろうか」と話した。【加藤昌平】