唐から密教の教え持ち帰った円珍、関係文書が「世界の記憶」に…家康が集めた仏教聖典は落選

国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)は24日、歴史的な文書類の保存を目的とする「世界の記憶」に、中国・唐へ渡って密教の教えを持ち帰った平安時代の僧・円珍に関する文書群「 智証大師円珍 (ちしょうだいしえんちん)関係 文書 (もんじょ)典籍―日本・中国の文化交流史―」を登録することを決めた。日本関連の「世界の記憶」(国際登録)は8件目となる。
「円珍関係文書典籍」は、円珍が唐に渡る際に九州の大宰府で交付された渡航証明書や、唐の役所で発給された通行許可書など、計56件で構成され、すべて国宝に指定されている。日本と中国の文化交流の様相や、唐代の交通制度などを伝える貴重な史料だ。円珍にゆかりが深く、文書を所有する大津市の 園城寺 (おんじょうじ)( 三井寺 (みいでら))が、東京国立博物館とともにユネスコに申請していた。
文書類には傷みがみられ、一部は文化庁、宮内庁、読売新聞社が国宝などの修理を支援する「紡ぐプロジェクト」の助成を受け、大津市内で修理されている。
日本から同時に申請していた、徳川家康が全国から集めた仏教聖典「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典 叢書 (そうしょ)(大蔵経)」は登録されなかった。
◆円珍=814~891年。讃岐(香川県)の生まれ。853年に仏法を学ぶため、唐へ渡った。天台山を巡礼し、長安で唐の高僧に師事して、密教を受法。約5年にわたって滞在し、帰国後は天台座主を務めた。