ディズニーリゾートがあることで知られる千葉県浦安市のベイエリアで、放火とみられる不審火が相次いでいる。
JR新浦安駅近くのこのエリアは、高層マンションのほか、ホテルや大型公園が多く、リゾート地のような雰囲気が人気の住宅地だが、今月に入ってから計5件の不審火が発生。火の気のない場所での発生ということもあり、警察は連続放火事件の可能性もあるとみて捜査に当たっている。
20棟のマンションが密集する大規模な住宅地で火事が発生
火災はいずれもマンションの敷地内の駐輪場が火元で、これまでにバイクや自転車が35台以上焼けたという。5件の火災には複数の“共通点”も見つかり、同一犯による放火の可能性もあるため、住民は不安な日々を過ごしている。
1件目の火災は、ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日、祝日の水曜日に発生した。現場は、JR新浦安駅から徒歩10分程度、20棟のマンションが密集する大規模な住宅地。このうちの5号棟で、駐輪場に停めてあった自転車やバイク計17台ほどが焼ける火事が起きた。現場の向かいの棟に住む男性は火災について次のように話す。
焼け跡からはガス缶やカセットボンベのようなものが
「夜中に何かが爆発したような音が1回して、その後また2回目の爆発音が聞こえました。しばらくして消防車のサイレンの音がすさまじかったですよ。何事かと思いました。さすがに外に出て見に行くようなことはしませんでしたが、買い物に行く途中の通り道なので翌朝現場を見てみると、規制線のようなテープが張られていて何かが焦げたようなにおいがしました」
ゴールデンウィークの最初の火災をきっかけに事件が相次ぐ。13日には4号棟で、14日には3号棟で、バイクや自転車が合わせて20台くらい燃える不審火が発生した。焼け跡からそれぞれガス缶やカセットボンベのようなものが見つかったという。
3件目の不審火が発生した翌日、マンションの女性住民は次のように話した。
火災があった3、4、5号棟はすべて賃貸マンション
「不審火が5号棟、4号棟、そして3号棟と続いているから、『次はまさか2号棟じゃないか』なんてこのあたりでちょっと話題になってるんですよ……。何も起きないといいんだけど」
住民の不安が募るなか、マンション近辺では千葉県警の警察官や警備員が常時巡回し、通りかかる人たちに声掛けをしたり、定期的に駐輪場の点検を実施したりと、警戒を強めていた。
火こそ確認されなかったものの、18日には3号棟の駐輪場でバイク1台の燃料タンクの中からティッシュのようなものが見つかった。これで4件目。ここまでの事件にはある奇妙な共通点がある。前出の男性が続ける。
「私の住んでいるところは分譲マンションですが、火災があった3、4、5号棟の3棟はすべて賃貸マンションなんです。分譲マンションの住民は毎月1回程度、それぞれの棟で寄合のようなものがあるので住民の顔と名前はある程度知っていますが、賃貸の方はあまりお付き合いがないようです。
特にこのあたりでトラブルがあったとか、変な人がいるとかは聞いたことがありません。海沿いの静かでいいエリアだと思って、35年ほど前にマンションを購入しましたが、まさかこんなことが起きるなんてびっくりです」
「まさか次は自分の住んでいるマンションが狙われるとは…」
もともとマンションの駐輪場には防犯カメラが設置されていなかったが、一連の不審火の後に新たに防犯カメラが取り付けられている。警察や住民が警戒を強めていたなか、5件目の不審火が発生してしまう。4件の相次いだ不審火が発生したマンションから600メートルほど離れた場所にある、ノーマークの集合集宅が舞台になった。
5件目の火災が発生したマンションに住む会社員の男性が火災発生時の緊迫した様子を語る。
「夜8時くらいでしょうか。火災報知器が鳴り、マンションの住民に『ただちに避難してください』と呼びかけるアナウンスがあって、すぐに外に出ました。火は見えませんでしたが、駐輪場あたりの煙がものすごかったです。近くのマンションで起きていた火災のことは知っていたのですが、まさか次は自分の住んでいるマンションが狙われるとは思ってもみませんでした」
大通り沿いの目立つ場所を狙った大胆な犯行
これまでの火災現場とは別のマンションでの発生となったが、共通点も浮かび上がる。男性が続ける。
「このマンションは、エレベーターには防犯カメラがありますが、駐輪場にはないんです。それに自分の住んでいるマンションも火災があったマンションもUR都市機構の賃貸なんですよ。不審者の情報や近隣トラブルも聞いたことないですし、そもそも賃貸ですからあまりご近所づきあいもなくて……」
事件との関連は定かではないが、このマンションは奇しくも“2号棟”だった。
「両隣には郵便局とコンビニがあって防犯カメラもあるし、このマンションは大通りに面しています。これまで火災があったマンションも新浦安駅から近い場所ですよね。もし誰かが火をつけたのなら、目立つような場所を狙うなんて大胆だなと思いました。今後エスカレートしたら、けが人が出たり延焼したりする可能性もあるので、本当に怖いです」(同前)
5月に入って、新浦安で立て続けに起こった未遂含む5件の火事。賃貸マンションばかりが狙われた騒動。5、4、3、そして2号棟へとカウントダウンさながらに移る犯行現場。地域の住民は安物のミステリのようだとは笑っていられない、不安な日々を送っている。
(「文春オンライン」編集部/Webオリジナル(特集班))