難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者への嘱託殺人などの罪に問われ、京都地裁で29日に行われた元医師、山本直樹被告(45)の初公判。検察側は冒頭陳述で、共犯として起訴された医師の大久保愉一(よしかず)被告(45)が女性患者とSNS(交流サイト)でやりとりし、薬物の投与も実行したと指摘した。また山本被告も大久保被告の考えを認識し、現場で介護士の立ち入り阻止を図ったなどと述べ、共謀にあたると主張した。
これに対し弁護側は、「大久保被告が何をしたのか知ったのは、女性患者の部屋を出た後だった」と述べ、無罪を訴えた。
起訴状などによると、山本被告は大久保被告と共謀し令和元年11月30日、全身の筋肉が徐々に動かなくなるALSで寝たきり状態だった京都市中京区の無職、林優里(ゆり)さん=当時(51)=に依頼され、致死量の薬物を投与。急性薬物中毒で死亡させたなどとしている。
検察側によると、事件当日、京都で合流した両被告は友人を装って林さんの自宅を訪問。寝室にいた介護士が席を外して3人のみになった約15分の間に大久保被告が胃婁(いろう)を通じて薬物を注入し、山本被告はドアの前に立ちふさがって介護士の入室を阻止しようとしたなどと指摘した。
この日の初公判で、山本被告は「大久保被告と一緒にいたことは間違いないが、共謀も実行もしていない」と起訴内容を否認していた。