札幌市東区の公園などで男子用トイレの小便器の底にはめ込まれた蓋が連続して盗まれた事件で、市は8日までに新たに複数の公園で被害が出たと明らかにした。排水溝にゴミが入らないようにする「目皿」と呼ばれる部品で、補充直後に盗まれるケースもあった。「いったい誰が、何のために」――。トイレでの連続窃盗事件の謎は深まるばかりだ。(塚原千智)
「理由がまったく分からない。公共の場のトイレでやめてほしい」。5月下旬に目皿が2度盗まれた東区の「あすなろ公園」のトイレ前で、近くに住む男性(69)はため息をついた。隔日で公園を散歩するという男性は「異物が詰まって迷惑がかかるし、大事にしてほしい」と訴えた。
市みどりの管理課によると、東区のモエレ沼公園など16か所と北区の拓北ひまわり公園の計17か所で、5月16~30日の平日、計38枚の目皿が盗まれているのが見つかった。女子トイレ内にある子ども用の男子トイレも被害に遭った。いずれも札幌丘珠空港に近く、大半が清掃業者が気付いた。
目皿を補充した直後に再び盗まれた公園もあり、市は今月1日に窃盗の続発を公表した。しかし、警戒を強化する中、6月6~8日にも新たに続けて盗まれたことが判明した。市は、詳細を調べている。
目皿は直径6・5センチの金属製で、市内の公園では2社の水まわり品メーカー製を使用。あるメーカーの担当者は「材質はステンレス製が多い。金属品として売っているのではないか」と推測する。
捜査関係者によると、銅などの金属は、買い取り価格が上昇すると公共の場所や工事現場からの盗難被害が増える傾向にある。
道内では、橋の名前が書かれた銅製の「橋名板」を盗んだとして、男2人が窃盗容疑で逮捕、起訴される事件が発生した。道警の発表によると、2人は昨秋以降、橋名板約170枚を盗み、細かく砕いて金属買い取り業者に売却していたといい、「銅線を盗んでももうからず、橋名板に狙いを切り替えた」などと説明しているという。
だが、札幌市内のある金属買い取り業者は「ステンレスの買い取り価格は、1キロ・グラムあたり約20~100円と安い。目皿を数十枚売っても、1000円にもならない」と首をかしげる。
市の担当者は「誰が何のために盗んだのか。いたずらなのかどうか全く想像がつかない」と困惑する。市内では過去に目皿の盗難被害は確認できていないという。
札幌東署は6月7日までに、市から出された大部分の公園の被害届を受理した。道警は窃盗事件として調べており、周辺のパトロールを強化している。市によると、トイレには防犯カメラは設置されていない。捜査関係者は「付近の防犯カメラの映像を解析するなどして捜査する」と話す。