高2刺殺事件で元少年の被告に20年求刑 弁護側は心神耗弱を主張

神戸市北区で平成22年10月、高校2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件で、殺人罪に問われた当時17歳の男(30)の裁判員裁判の論告求刑公判が12日、神戸地裁(丸田顕裁判長)で開かれた。検察側は「理不尽極まりない通り魔的犯行」として懲役20年を求刑。弁護側は責任能力が限定的だったとして刑の減軽を求め結審した。判決は23日。
論告で検察側は「犯行態様は悪質で、被害者を殺そうとする意思は強固」と指摘。精神鑑定の結果などを踏まえ「完全責任能力があったのは明らかだ」とした。
弁護側は「犯行当時、なんらかの精神障害の影響があったことは否定できない」と主張。「(被告は)不良グループを追い払うのに必死で、攻撃そのものが目的ではない」と殺意はなかったと訴えた。
この日は遺族による意見陳述も行われた。堤さんの父、敏さん(64)は事件を振り返り「あの瞬間、家族みんなの心が殺された」と悲痛な思いを吐露。「最も重い罰を科してほしい」と訴えた。
被告は最終陳述で「私はあまりに未熟でした。最低です」と述べた。
争点は殺意の有無と犯行当時の刑事責任能力。被告は「刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった」と殺意を否認。弁護側は犯行時に完全責任能力はなく、心神耗弱状態だったと主張した。
起訴状などによると、被告は平成22年10月4日午後10時45分ごろ、神戸市北区の路上で、堤さんを折りたたみ式ナイフで多数回突き刺すなどし、失血死させたとされる。
兵庫県警は発生から約11年後の令和3年8月、愛知県豊山町に住み、パート従業員をしていた被告を殺人容疑で逮捕。被告は事件当時、現場近くの祖母宅に住んでいたが、堤さんとは面識がなかった。