国会会期末(21日)が迫るなか、衆院解散をめぐる与野党の駆け引きが激化している。立憲民主党は、岸田文雄内閣への不信任案提出を検討しており、自民党幹部は「解散の大義になる」と牽制(けんせい)している。こうしたなか、「16日解散説」が急浮上してきた。天皇、皇后両陛下が17~23日に海外を訪問されるためだ。岸田内閣は、防衛力強化や少子化対策には前向きだが、増税など国民負担が増える政策が目立つ。LGBT法案の拙速な法制化や、レーダー照射事件を棚上げした日韓防衛協力、衆院選の候補者擁立をめぐる自民党と公明党の対立激化などの懸念もある。岸田首相が会期末に合わせて「伝家の宝刀」を抜いた場合、「自民党は惨敗する」と分析する識者もいる。
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「(内閣不信任案を)提出しない選択肢はない」
立憲民主党の幹部は、こう言い切った。党内には、会期末に合わせた不信任案提出が解散を誘発しかねないとの懸念もある。泉健太代表は国会最終盤の動きを見極める構えだが、検討が重ねられているのは間違いない。
11日午前のNHK「日曜討論」でも、自民党の井上信治幹事長代理と、立憲民主党の岡田克也幹事長が火花を散らした。
井上氏は「(不信任決議案提出は)国民に信を問う大義になり得る」「(解散は)首相の専権事項」「常在戦場で、それぞれの候補予定者が事前の準備を怠りなくやっていく」と語った。
岡田氏は「それなりの大義があって解散すべきだ。600億円という大きな税金も使われる」「そこをしっかり踏まえた上で解散するならしてください。受けて立つ」と牽制した。
こうしたなか、天皇、皇后両陛下が17~23日まで、国賓としてインドネシアを訪問されるため、会期末の解散日程について、「16日解散」「陛下外遊中の解散」「会期延長して解散」といった、いくつかの案が浮上している。
衆院解散は憲法7条で「内閣の助言と承認による天皇の国事行為」とされる。陛下の海外ご訪問中は解散詔書への署名・押印は得られないが、松野博一官房長官は9日の記者会見で、「(皇嗣の秋篠宮さまが)臨時に代行する国事行為に制限はない」と、関連法の解釈を説明した。
国民民主党の玉木雄一郎代表は10日、「(両陛下の外遊前の)『16日解散』も念頭に置いて準備を加速したい」と述べた。
岸田首相が会期末に合わせて衆院を解散した場合、どういう結果になりそうか。
政治評論家の伊藤達美氏は「自民党は議席を減らす。単独過半数を確保するかが焦点だ。立憲民主党は、それ以上に議席を減らすだろう。馬場伸幸代表の日本維新の会は伸ばすだろうが、急速な勢力拡大で〝飽和状態〟だ。そもそも、統一地方選の年は、地方議員は動かない。自民党には公明党との連携の課題があり、明確な争点もない。理想的な選挙時期は9月あたりではないか」と語った。