毒性の強いタリウムを叔母(61)に摂取させたとする殺人未遂容疑で再逮捕された宮本一希容疑者(37)=京都市左京区=が、大学関係者を装って業者から硫酸タリウム50グラムを購入していたことが捜査関係者への取材で判明した。関係書類から指紋も検出されたという。容疑者の周辺では、死亡した女子大学生からもタリウムが検出されており、大阪府警はこの業者から購入したタリウムを摂取させたとみている。
業者の「毒劇物譲受書」に容疑者名と印
捜査関係者によると、宮本容疑者は2020年5月22日、京都市内の業者に大学関係者を名乗って電話し、「硫酸タリウムを購入したい」と依頼した。業者の通話履歴に残っていた電話番号は、容疑者のスマートフォンの番号だった。3日後の25日に業者を訪問し、硫酸タリウム50グラムを購入していた。業者に残された「毒劇物譲受書」には「宮本一希」と氏名が書かれ、印鑑も押されていた。別の受領書からは容疑者の指紋が検出されたという。
叔母はこの2カ月後の7月19日から腹痛を訴えるようになり、同21日に体調が急変して入院。重い脳炎と診断され、意識不明で回復が見込めない状態となっている。血液や尿から致死量(成人で約1グラム)のタリウムが検出された。
府警によると、宮本容疑者は17年11月、親族が代表を務めるイベント企画会社の取締役に就任。叔母が役職を与えたとされる。しかし、使途不明な出金を繰り返したとして20年2月に叔母によって解任され、金銭的な援助も止められた。これ以降、容疑者のスマホにはタリウムの中毒症状や事件について調べる履歴が残されている。
財産目的で叔母の殺害企てたか
宮本容疑者は叔母が倒れた2カ月半後の20年10月、叔母が経営していた不動産会社の代表取締役に就いた。直後に叔母名義のマンションを転売したほか、複数の不動産が叔母名義から同社名義に変更されたという。叔母名義の複数の銀行口座からも23年1月ごろまでに計約5000万円が引き出されていた。このうち約3000万円が引き出された口座のキャッシュカードが容疑者の財布から見つかったほか、容疑者と似た人物が現金自動受払機(ATM)で現金の一部を下ろす姿が防犯カメラに映っており、府警は財産目的で叔母を殺害しようとしたとの構図を描いている。
宮本容疑者は22年10月に知人で立命館大3年の女子大学生(当時21歳)をタリウムで殺害したとして23年3月に逮捕、起訴された。その後、叔母に対する殺人未遂容疑でも再逮捕され、勾留期限の14日に殺人未遂罪で追起訴された。起訴状によると、宮本被告は20年7月中旬、京都市内あるいはその周辺で叔母にタリウムを摂取させ、殺害しようとしたとされる。大阪地検は認否を明らかにしていないが、被告は最初の逮捕から黙秘を続けているという。
宮本被告が二つの事件で起訴されたことで、一連の毒殺・毒殺未遂事件は法廷での審理に舞台が移る。いずれも裁判員裁判の対象事件だ。近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「簡単には入手できないタリウムが被告の近しい人物から相次いで検出され、入手ルートも特定されたとなれば重要な証拠になる。ただし、摂取させたとする直接証拠ではないので、第三者の介在を完全には排除できない。被告とタリウムの接点をどこまで評価するかが有罪認定のポイントになるだろう」と話す。【郡悠介、洪香】