近畿日本ツーリストの過大請求、発覚は市役所への1本の匿名電話「東大阪でもある」

新型コロナワクチンのコールセンター事業を巡り、旅行大手・近畿日本ツーリストの「関西法人 MICE (マイス)支店」(大阪市浪速区)の幹部3人が15日、詐欺容疑で大阪府警に逮捕された。14億円超に及ぶ一連の過大請求が明らかになったきっかけは、東大阪市への1本の電話だった。
今年3月下旬、東大阪市役所の代表電話に「パソナのような過大請求が、東大阪でもある」と匿名の人物から情報が寄せられた。
人材派遣大手の「パソナ」(東京)は約1か月前、再委託先による人件費の水増し請求で、大阪府と兵庫県の3市から計10億8000万円の過大請求があったと公表していた。
東大阪市の担当者は半信半疑で、支店が再委託していた別会社に抜き打ち調査を実施。4日後、近畿日本ツーリスト西日本支社が支店に代わり、「うちがやった」と不正を申告してきた。
手口は同じ人件費の水増しだった。支店の営業課長、太田幹雄容疑者(54)らが、市と取り決めたオペレーターの人数より、少ない人数で再委託先に発注し、市には正規の人数分で人件費を請求。支店長の森口裕容疑者(54)は黙認し、不正を隠すため、再委託先に対し、市に提出する勤務実態に関する資料の改ざんを指示していた。
同社の発覚後の調査で、同市に対する過大請求は約3億3600万円に上った。森口容疑者は「事の重大性を知れば知るほど、恐ろしくなった。自分の中で収めるしかないと思った」と社内調査に説明した。
同社の資料などによると、関西法人MICE支店は、個人旅行の手配はせず、自治体事業の受託などに特化している。2022年10月時点の社員は約30人。3~7人のチームが六つある。うち一つのチームリーダーが太田容疑者、複数のチームを統括していたのが臼杵賢一容疑者(58)。トップが森口容疑者だった。

他支店でも不正、捜査関係者「支店担当者間でノウハウ共有か」

東大阪市での過大請求を受け、同社は全国で社内調査を開始。その結果、同支店では大阪府や羽曳野市、泉大津市、河南町の事業で計約7600万円の過大請求が判明。ここから、全国の支店での同じ過大請求が次々に明らかになった。現時点で判明しているのは総額約14億7000万円。このうち、静岡支店が受託した静岡県焼津市や掛川市など、16自治体の事業では意図的な過大請求があった。同社は詳しい調査を続ける。
過大請求が各地の支店で判明するのはなぜなのか。「支店の担当者間でノウハウが共有されていったのではないか」。ある捜査関係者はそう話す。
15日、関西法人MICE支店が入る高層ビル7階フロアはひっそりとしていた。男性副支店長は取材に対し、「何も申し上げることはない」と話すにとどまった。
一方、東大阪市の野田義和市長は「市民の信頼を裏切るもので強い憤りを感じる。捜査に協力していく」とのコメントを出した。

◆MICE=Meeting(会議)、Incentive Travel(報奨・研修旅行)、Convention(国際会議)、Exhibition/Event(展示会)の頭文字を取った造語で、集客が見込まれるイベントなど大規模事業の総称。