見通し良い道路、車体損傷激しく 目撃者「まさか」 北海道バス事故

北海道八雲町で道内各地を結ぶ都市間バスとトラックが衝突し、5人が死亡、多数の負傷者が出た。仕事や観光など幅広い目的で利用され、住民の足となっている交通手段が関連した事故。目撃した人は「まさかこんな大事故が」と驚きの声を上げ、多くの命が失われたことにバス会社の担当者は肩を落とした。
現場は札幌市と函館市を結ぶ片側1車線の国道で、周囲に畑など農地が広がっている。事故現場は緩やかなカーブで、見通しは良い。衝突したバスとトラックは運転席付近などが大きく損傷し、衝撃の激しさがうかがわれた。
札幌市の男性(36)は車を運転中、前方にトラックが止まって道路を塞いでいるのが見えた。最初は「右折か左折に手間取っているのか」と思い、その後、事故だと気づいた。回り道して事故現場の裏手に出ると、動かなくなっている車や、トラックの荷台に積まれていた豚が周囲の路上を走り回っている様子が見えた。「見通しが良く、事故が起きるような場所とは思えない」と驚いた様子だった。
車で事故現場を通りかかった女性は、バスとトラックの前部がぐちゃぐちゃに壊れているのを見た。事故直後で救急車は来ておらず詳しい状況は分からなかったが、「ニュースで大事故だと知った。一人でも多くの人が救われてほしい」と語った。
乗務歴15年、面倒見よく
事故の一報を受け、バスを運行する北都交通バス事業部(北海道北広島市)では、職員たちが対応に追われた。「尊い命を失い、大変重く受け止めている」。18日夕に記者会見した担当者は神妙な面持ちで報道陣に深々と頭を下げた。
北都交通によると、亡くなったバス運転手の興膳孝幸さん(64)は札幌市在住で、同社のバス乗務歴約15年。札幌―新千歳空港間の空港連絡バスをメインに運転していた。優良乗務員で後輩乗務員の面倒見もよく、同僚によく孫の話をうれしそうにしていた。
興膳さんの死亡はバス会社から息子に伝えた。息子は「そうですか……」と言ったきり、しばらく絶句していたという。
同社はバスのドライブレコーダーからチップを後日回収し、詳しい内容を発表する予定という。【金志尚、鈴木理之、遠山和宏、真貝恒平】