大阪府の高校授業料「完全無償化」、近畿の私学は「断固反対」…学校負担17億円に膨らむ

大阪府が来年度から実施する、高校授業料完全無償化の素案を巡り、府と私立高校側との間に溝が生じている。年間授業料が60万円を超える分を学校が負担する仕組みになっており、所得制限がなくなることで、私学側には対象者の増加で負担がさらに膨らむ懸念がある。府は現時点で歩み寄りを見せておらず、波乱要因を抱えての議論となりそうだ。
「賛成できかねる」

「私学経営に介入する手法に断固反対だ」。大阪私立中学校高等学校連合会の草島葉子副会長は19日、大阪市内で記者団に憤りを込めて語った。
これに先立ち、近畿2府4県の私学団体の代表者会合があった。大阪府外の学校に通う生徒も対象となるため、新制度への参加には「授業料の徴収で成り立つ私学教育の根幹に関わる問題で賛成できかねる」との意見でまとまったという。
現制度は、府内の私立高に通う場合、年収が590万円未満の世帯は府が定める標準授業料(年60万円)分が実質無償。590万円~910万円未満なら、所得や子の数に応じて世帯負担が軽減される。
新制度は、2024年度に高3、25年度に高2と高3、26年度に全学年で実施する。国の就学支援金に府独自の補助金を上乗せする形で、完全実施により年間382億円以上の予算がかかるという。
負担は17億円に

私学側の反発要因には、標準授業料を上回った分の学校負担がある。現行で私学の負担は800万円未満世帯に限られるが、新制度では全て対象となる。
現在、大阪連合会に加盟する97校のうち96校が参加。うち41校で上限を超え、負担額は計約9・5億円に上る。新制度に伴って対象は約4万人から約8万人に倍増し、負担は計約17億円に膨らむ見込みという。
府教委は、府外の私学団体にも新制度を説明していく。兵庫県の連合会の和田孫博副理事長は「無償にならない(大阪府外の)生徒に不公平になる」と反発する。
大阪連合会は、標準授業料の上限などを見直すよう府に求めている。一方、大阪府は「私学も公教育を担う機関で、負担への協力をお願いしたい」との立場。制度不参加なら補助金を払わない方針で、その学校の生徒が負担することになる。
大阪府の吉村洋文知事は19日、記者団に「私学団体との摩擦は起きるが、大阪の子どもが学びたい学校で学べるようにすることが重要。各校の課題を聞き、丁寧に解決したい。巻き戻すつもりはない」と述べた。