人気のポケモンカード、高値取引で盗難相次ぐ…通常5枚180円が1枚数百万円にも

人気トレーディングカードゲーム「ポケモンカード」(ポケカ)が、店舗から盗まれる事件が全国で相次いでいる。希少カードが愛好家の間で高値で取引され、中には1枚数百万円になるカードもあり、盗みの多くは換金目的とみられる。異常な高騰に、販売店などで転売を規制する動きもある。(山岸愛花梨)
ショーケース破壊

山梨県富士吉田市の「カードショップmero」で5月8日未明、ショーケースなどが割られ、ポケカや150枚入りの「ボックス」数十箱などが盗まれた。店の引き出しにしまっていた1枚18万円のポケカも盗まれ、県警によると、被害は1万枚以上、総額は約220万円に上るとみられる。代表の後藤拓真さん(27)は「値段で選んだのだろう。こんな田舎で事件が起こるとは」と困惑していた。
県警は、この店からポケカを盗んだとして東京都内の男(25)を窃盗容疑で逮捕し、検察はこのうち2枚(計1万5500円)について同罪などで起訴した。男は「盗んだカードを売ってお金にしていた。埼玉県や東京都でも盗んだ」と供述しているという。
購買欲あおる

ポケカは通常5枚入り180円などで販売されているが、希少なカードは専門店やフリーマーケットサイトなどで高値で売買されてきた。
ポケカは海外でも人気で、高騰の一因とされる。外国語版も販売されているが、ポケカを扱う「フルアヘッド」(名古屋市)の担当者は「日本のカードはオリジナルで格好いいとされている」とし、外国人が200万円分も購入したことがあるという。
販売店や個人が独自に複数枚の中古カードをまとめて売る「オリジナルパック(オリパ)」が、高騰に拍車をかけているとの指摘もある。数千円や数万円など価格は様々で、中身がわからないように販売することからくじ引き的な要素が強く、売る側にとっては安価なポケカもさばける。希少カードを交ぜて「高額のポケカが当たる」と宣伝して購買欲をあおるケースもある。
都内で専門店を運営する「NINJA」の小川北人代表(32)は「当たった人が高値で転売し、そのポケカがまたオリパの当たりとして販売される」と、高騰のからくりを説明する。
フィルム外して

公平に購入できるよう、転売対策を取る店もある。大手玩具店「トイザらス」では、今月発売された新しいポケカを会員限定で抽選販売した。さらに、未開封の商品は高値で転売される傾向にあることから、箱で販売した商品については箱を包む透明のフィルムを外して購入者に渡した。
家電量販店大手「ヤマダデンキ」でも今月、事前に抽選して販売した。ヤマダホールディングスの広報担当は「子供やファンへ公平にポケカが行き渡ってほしい」と話した。
個人売買による高値での取引を規制するため、フリマアプリ大手メルカリは今月、ポケカの適正な取引に向けた包括連携協定を任天堂の関連会社「ポケモン」と締結した。利用者に注意喚起し、場合によっては出品を削除するという。