NPO理事長が無罪主張「一度もしていない」、検察側「患者募った」と指摘…臓器あっせん初公判

NPO法人「難病患者支援の会」(東京)による海外での臓器あっせん事件で、臓器移植法違反(無許可あっせん)に問われたNPO理事長の菊池 仁達 (ひろみち)被告(63)と法人としてのNPOの初公判が30日午前、東京地裁(馬場嘉郎裁判長)で始まった。菊池被告は「100人近くの命を助けてきたが、一度もあっせんはしていません」と述べ、無罪を主張。弁護側も海外移植は「あっせん」には当たらないとして、同法違反の成立を争う姿勢を示した。
海外での臓器移植のあっせんが罪に問われるのは、1997年の同法施行以来、初めて。公判を通して、NPOが関わった海外移植の全体像がどこまで解明されるかが注目される。
起訴状などでは、菊池被告は2021年1月~昨年7月、厚生労働相から臓器あっせん業の許可を得ずに、肝硬変を患う40歳代の男性と腎不全の50歳代男性の計2人にそれぞれベラルーシでの移植を勧め、移植費用などとして計5150万円をNPOの口座に振り込ませ、同国の病院で移植手術を受けさせたとしている。40歳代の男性は肝臓の移植手術後に死亡した。
検察側は冒頭陳述で、03年頃から海外での臓器移植の仲介活動を始めた菊池被告は、NPOのホームページで臓器移植を希望する患者を募っていたと指摘。当初は中国で移植手術を受けさせる活動を行っていたが、新型コロナウイルスの影響で渡航できなくなり、ベラルーシに移植ルートを確保したと述べた。
その上で検察側は、菊池被告が「死体からの移植」を前提に患者らとの面談などを進めていたと主張した。
厚生労働省の通知は患者の募集や病院との連絡・調整を「あっせん」と定めており、検察側はこうした規定を根拠に、被告の行為が無許可の「あっせん」に当たるとの立証を行うとみられる。
NPOを巡っては、読売新聞が昨年8月、21年12月に中央アジア・キルギスで行われた生体腎移植で、売買された臓器が使われた疑惑を報道。警視庁は今年2月、生体移植が無許可あっせん罪の対象外であることを踏まえ、死体からの移植が行われたとされる「ベラルーシルート」での菊池被告の逮捕に踏み切り、東京地検が3月、菊池被告と法人としてのNPOを同法違反で起訴していた。