政府は12日午前、北朝鮮が同日午前9時59分頃、内陸部から東方向に向けて少なくとも1発の弾道ミサイルを発射したと発表した。防衛省は同11時15分、ミサイルは朝鮮半島東の日本海で日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したと推定されると明らかにした。現時点で航空機や船舶への被害は確認されていない。
飛行時間は70分を超えているとみられ、昨年3月24日に北朝鮮が発射した新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の71分間を上回り、過去最長となる可能性がある。
韓国軍合同参謀本部は発射地点について、首都 平壌 (ピョンヤン)付近だとしている。防衛省によると、ミサイルの飛行距離は約550キロ・メートルと見積もられている。高角度で打ち上げ、迎撃が困難な「ロフテッド軌道」で飛行したとみられる。同省でミサイルの性能について詳しい分析を進める。
松野官房長官は12日午前の記者会見で、「国際社会の平和と安全を脅かすとともに、関連する安保理決議に違反するものであり、容認できない。国民の安全に関わる重大な問題だ」と非難した。そのうえで、北朝鮮に対し、外交ルートを通じて抗議したことを明らかにした。
北朝鮮は 金正恩 (キムジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、 金与正 (キムヨジョン)党副部長らが10日から11日にかけ、米国の偵察機が北朝鮮領空を侵犯したと繰り返し主張し、何らかの対抗措置を示唆していた。
今回のミサイル発射には国威発揚を図る意図もあるとみられる。今月27日には朝鮮戦争の休戦協定締結から70年の節目を迎える。北朝鮮は対米戦争の勝利記念日と位置づけており、緊張を高めて国内の結束強化につなげる狙いがあるようだ。
北大西洋条約機構(NATO)首脳会議出席のため、リトアニアを訪問中の岸田首相は情報収集・分析に全力を挙げ、国民に迅速・的確な情報提供を行うことなどを関係省庁に指示した。 政府は国家安全保障会議(NSC)4大臣会合を開き、今後の対応を協議した。
自衛隊は国内への落下の恐れはないと判断し、迎撃措置は取らなかった。